恋泥棒の犯行予告


「駅の南口のところにある花時計が待ち合わせの場所。たぶん有がヒマそうに座ってると思う」


さっきから日世のパンツから低い唸り声が止まらない。

聞きなれたその音に急かされながら道を歩き続ける。

それほど遠いわけじゃないけど、こうも暑いと歩く気も失せるってもんだ。

繋いでいた手はとうの昔にほどかれていて、少女漫画の主人公たちの汗腺はどうなっていたんだろうと思うほど手のひらが湿っている。


「あ、あれ有じゃん」


視線の先には柄シャツを着て涼しい顔をする不破島くんと……


「ん? 暁奈も来るって不破島くん言ってた?」

「聞いてないんだけど」


私はともかく日世すら知らないなんて。

あの2人って実は仲良いのかな?


「おせーよ日世! 何いちゃついてんだ」

「いちゃついてないって。見てよこの汗だくなザマを。こちとら全力で歩いてたんだよ」


首から滴る汗。

前髪が額に張り付いて鬱陶しそう。

日焼け止め、落ちてるだろうな。

あとで塗り直さないと。
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