デアウベクシテ
第10話~小さい女
「ありがとう、彩華。彩華は優し…。」
「優しくなんかない…。」
私は賢人の言葉を遮る。
「私なんて…私なんて…。」
(怖い…怖いけど…。)
「…私なんて…部長と会ってた…。賢人が女といるところを見て…私はすぐに部長と会って…。でも怖くなってすぐ逃げた…。自分で誘っておいて、何もなかったとは言え、部長と会ったのは事実…。」
私は下を向き、頭に手を当て髪を握った。
「小さなことでムキになって、1年前に別れた不倫相手と会って、いざ会ったら怖くなって…。何てバカなの…私は何てことをしたの…!」
熱い目から涙が落ちたのが見えた。
「自分がこんなに小さい女だったなんて思わなかった!」
私はバッグも持たず、部屋着を踏み付け、玄関へと走った。一秒でも早く部屋を出たかった。私は賢人にふさわしくない。私は愚かな女。
賢人はすぐに私に追い付き、私を後ろから抱き締めた。
「行くなって初めに言っただろ…。」
「離して…。」
「離さない。」
「私じゃない…。賢人には他の人がいる…。」
「俺を受け入れてくれるのは彩華だけだ…。行くなよ…。」
出会った次の日にも言われた言葉。負けちゃだめ。
「彩華だってそうだろ?俺と同じ気持ちだろ?」
「違う…。」
「じゃあ何で今泣いてるんだよ、俺の為の涙だろ?そうだろ…?」
私は頬に指を当てた。頬がしっとり濡れている。私そんなに泣いてたの?
「これは…悔しいから…。賢人を…傷付けたから…。」
「ほら、俺の為だ。」
「それも違う…。」
「彩華は繊細で優しい。それが今まで埋もれてただけだ。本当は弱いのに強がる。それが彩華だ。その彩華が、俺は好きだ…。彩華…。」
私は弱い、賢人の『彩華』。私は負ける、賢人に、自分に。
情けない。
私は賢人の腕を握った。そっとほどいて振り返り、賢人の目を見る。きっと私は泣いていた。寂しそうな目の賢人。賢人はさらに私を強く抱き締めた。苦しくなるほど。
止まらない涙。賢人は時々、その涙を指で拭う。そしてまた抱き締める。そして時々呼ぶ。
「彩華…。」
呼ばれるほど落ち着く私。何て酷い女なの。
「彩華、今日はもう寝よう。今日のことを忘れるって意味じゃない。新しい明日の為だ。」
何て優しい人。
私は自分が踏み付けた自分の部屋着に着替えた。賢人とベッドの上。ふたり天井を見ている。賢人は私の手を握ってくれていた。
「賢人?」
「なに?彩華。」
私は、ちゃんと賢人の目を見る。
「賢人…ごめん…。ごめん…賢人…。」
「彩華、また泣きそうな顔してる。ゆっくり寝よう。」
いつもの賢人。優しいの。
「…うん…。」
賢人は私の瞼にキスをした。私は賢人に体を寄せた。
「ごめん、彩華。やっぱりゆっくりできない。」
「どうしたの?」
「抱きたい、彩華。」
断る理由なんてない。抱いて欲しい。調子の良い女。でも。
「賢人が、私にいちいち聞かないで。」
賢人は何度も天国へ連れて行ってくれた。優しかったり、激しかったり。賢人は何度も私の名前を呼ぶ。それにつられて私も呼ぶ。叫ぶ。体が反応する。
「彩華…」
「もっと呼んで…」
「彩華…彩華…」
私達は天国へ。
「優しくなんかない…。」
私は賢人の言葉を遮る。
「私なんて…私なんて…。」
(怖い…怖いけど…。)
「…私なんて…部長と会ってた…。賢人が女といるところを見て…私はすぐに部長と会って…。でも怖くなってすぐ逃げた…。自分で誘っておいて、何もなかったとは言え、部長と会ったのは事実…。」
私は下を向き、頭に手を当て髪を握った。
「小さなことでムキになって、1年前に別れた不倫相手と会って、いざ会ったら怖くなって…。何てバカなの…私は何てことをしたの…!」
熱い目から涙が落ちたのが見えた。
「自分がこんなに小さい女だったなんて思わなかった!」
私はバッグも持たず、部屋着を踏み付け、玄関へと走った。一秒でも早く部屋を出たかった。私は賢人にふさわしくない。私は愚かな女。
賢人はすぐに私に追い付き、私を後ろから抱き締めた。
「行くなって初めに言っただろ…。」
「離して…。」
「離さない。」
「私じゃない…。賢人には他の人がいる…。」
「俺を受け入れてくれるのは彩華だけだ…。行くなよ…。」
出会った次の日にも言われた言葉。負けちゃだめ。
「彩華だってそうだろ?俺と同じ気持ちだろ?」
「違う…。」
「じゃあ何で今泣いてるんだよ、俺の為の涙だろ?そうだろ…?」
私は頬に指を当てた。頬がしっとり濡れている。私そんなに泣いてたの?
「これは…悔しいから…。賢人を…傷付けたから…。」
「ほら、俺の為だ。」
「それも違う…。」
「彩華は繊細で優しい。それが今まで埋もれてただけだ。本当は弱いのに強がる。それが彩華だ。その彩華が、俺は好きだ…。彩華…。」
私は弱い、賢人の『彩華』。私は負ける、賢人に、自分に。
情けない。
私は賢人の腕を握った。そっとほどいて振り返り、賢人の目を見る。きっと私は泣いていた。寂しそうな目の賢人。賢人はさらに私を強く抱き締めた。苦しくなるほど。
止まらない涙。賢人は時々、その涙を指で拭う。そしてまた抱き締める。そして時々呼ぶ。
「彩華…。」
呼ばれるほど落ち着く私。何て酷い女なの。
「彩華、今日はもう寝よう。今日のことを忘れるって意味じゃない。新しい明日の為だ。」
何て優しい人。
私は自分が踏み付けた自分の部屋着に着替えた。賢人とベッドの上。ふたり天井を見ている。賢人は私の手を握ってくれていた。
「賢人?」
「なに?彩華。」
私は、ちゃんと賢人の目を見る。
「賢人…ごめん…。ごめん…賢人…。」
「彩華、また泣きそうな顔してる。ゆっくり寝よう。」
いつもの賢人。優しいの。
「…うん…。」
賢人は私の瞼にキスをした。私は賢人に体を寄せた。
「ごめん、彩華。やっぱりゆっくりできない。」
「どうしたの?」
「抱きたい、彩華。」
断る理由なんてない。抱いて欲しい。調子の良い女。でも。
「賢人が、私にいちいち聞かないで。」
賢人は何度も天国へ連れて行ってくれた。優しかったり、激しかったり。賢人は何度も私の名前を呼ぶ。それにつられて私も呼ぶ。叫ぶ。体が反応する。
「彩華…」
「もっと呼んで…」
「彩華…彩華…」
私達は天国へ。