デアウベクシテ
第12話~ありがとう
賢人と出会って1年以上経った。それでもまだ胸に引っ掛かるもの。何なんだろう。このままでは駄目。なんとなくだけどそう思うまま時間は過ぎていった。
「彩華?」
「ん?」
「昨日も綺麗だった。」
素直になれない私は『ありがとう』の5文字も言えない。一緒にいて、1年以上も経つのに。
「あ、彩華『ありがとう』って顔だ。」
それでも賢人は私と一緒にいてくれた。
「今度は色っぽい目してる。『キスして』って目…。」
お互い出勤前、玄関で熱いキス。
(賢人はどうしてわかるの?私のこと。)
でも私も賢人の色んな表情、色んな目を見て、覚えて記憶してる。どんなことを思い考えているのかもわかるようになった。どうして?
私が楽しい時、賢人も楽しそう。私がヒステリックの時、賢人は一度それを吸収する。その後に言うの、賢人の思考を。私を受け止めて私の立場になって考えてくれる。一緒にいればいるほど賢人の優しさを知る。
私も優しくなりたい。賢人の為に。どうしたらなれるの?でも『教えて』なんて言えない。私はどうしようもない女。
洋食屋の味も優しさも何も変わっていない。アイスコーヒーとフレンチトースト。私は初めて来た時したように、頬杖をつきながら窓を見る。微かに見える、自分の顔。賢人はあの時と同じように私に言った。
「何見てるの?彩華は綺麗だよ。」
あの時の『綺麗』とは重味が違う。
(心まで、裸になれたら…。)
私も同じように答えた。
「自分の顔。情けないなって…。」
「情けない?」
「私はもっと賢人に優しくならなきゃ…。でもどうしたらいいか…。」
「彩華は優しいよ。」
「どこ?どんなところ?」
「お腹空いたらご飯作ってくれる。風邪をひいたら看病してくれる。イベント毎にプレゼントを贈ってくれる。公園に行ったら缶コーヒーを持ってきてくれる。」
「そういうんじゃなくて…。」
「初めて会った日、俺を助けてくれた。」
「それは別よ!」
私は大きく言ったのに。
「彩華。そうやって俺のことを考えてくれるところだよ。俺に笑ってくれる、泣いてくれる。一緒にいてくれる。」
「それだけじゃ…。」
「言っただろ?一緒にいることが一番大切だって。俺にとって、彩華自身が優しさなんだよ。」
優し過ぎる賢人。何も言えない。きっと私今、すごく情けない顔してる。
(心まで裸に…素直に…なるなら今。)
「…ありがとう…。」
初めて言えた『ありがとう』の5文字。たった5文字の言葉。
賢人は微笑んだ。
「ありがとう、彩華。好きだ、彩華。」
きっと私今、泣きそうな顔してる。
「帰ろう、彩華。」
帰り道。賢人の手。いつもより暖かく感じた。ベッドの上。賢人の全て。いつもより熱く感じた。こういうのを『愛』というのだろうか。
「彩華。」
「なに?」
賢人は今までで一番の優しい表情。私の頬に手を当てる。
「愛してるよ、彩華。」
同じことを、同じ時に思う。
「賢人…。」
「何も言わなくていい。」
「嫌…駄目…だめ…。」
(一度裸になれたのだから。)
「ありがとう…賢人…。」
(言えた…。これからもっと、自然に、言えるようになりたい。素直に、なりたい…。)
「彩華…」
「賢人…熱い…」
賢人のその熱。私の心の身に纏っているもの全てを、どうか焦がして。
「彩華?」
「ん?」
「昨日も綺麗だった。」
素直になれない私は『ありがとう』の5文字も言えない。一緒にいて、1年以上も経つのに。
「あ、彩華『ありがとう』って顔だ。」
それでも賢人は私と一緒にいてくれた。
「今度は色っぽい目してる。『キスして』って目…。」
お互い出勤前、玄関で熱いキス。
(賢人はどうしてわかるの?私のこと。)
でも私も賢人の色んな表情、色んな目を見て、覚えて記憶してる。どんなことを思い考えているのかもわかるようになった。どうして?
私が楽しい時、賢人も楽しそう。私がヒステリックの時、賢人は一度それを吸収する。その後に言うの、賢人の思考を。私を受け止めて私の立場になって考えてくれる。一緒にいればいるほど賢人の優しさを知る。
私も優しくなりたい。賢人の為に。どうしたらなれるの?でも『教えて』なんて言えない。私はどうしようもない女。
洋食屋の味も優しさも何も変わっていない。アイスコーヒーとフレンチトースト。私は初めて来た時したように、頬杖をつきながら窓を見る。微かに見える、自分の顔。賢人はあの時と同じように私に言った。
「何見てるの?彩華は綺麗だよ。」
あの時の『綺麗』とは重味が違う。
(心まで、裸になれたら…。)
私も同じように答えた。
「自分の顔。情けないなって…。」
「情けない?」
「私はもっと賢人に優しくならなきゃ…。でもどうしたらいいか…。」
「彩華は優しいよ。」
「どこ?どんなところ?」
「お腹空いたらご飯作ってくれる。風邪をひいたら看病してくれる。イベント毎にプレゼントを贈ってくれる。公園に行ったら缶コーヒーを持ってきてくれる。」
「そういうんじゃなくて…。」
「初めて会った日、俺を助けてくれた。」
「それは別よ!」
私は大きく言ったのに。
「彩華。そうやって俺のことを考えてくれるところだよ。俺に笑ってくれる、泣いてくれる。一緒にいてくれる。」
「それだけじゃ…。」
「言っただろ?一緒にいることが一番大切だって。俺にとって、彩華自身が優しさなんだよ。」
優し過ぎる賢人。何も言えない。きっと私今、すごく情けない顔してる。
(心まで裸に…素直に…なるなら今。)
「…ありがとう…。」
初めて言えた『ありがとう』の5文字。たった5文字の言葉。
賢人は微笑んだ。
「ありがとう、彩華。好きだ、彩華。」
きっと私今、泣きそうな顔してる。
「帰ろう、彩華。」
帰り道。賢人の手。いつもより暖かく感じた。ベッドの上。賢人の全て。いつもより熱く感じた。こういうのを『愛』というのだろうか。
「彩華。」
「なに?」
賢人は今までで一番の優しい表情。私の頬に手を当てる。
「愛してるよ、彩華。」
同じことを、同じ時に思う。
「賢人…。」
「何も言わなくていい。」
「嫌…駄目…だめ…。」
(一度裸になれたのだから。)
「ありがとう…賢人…。」
(言えた…。これからもっと、自然に、言えるようになりたい。素直に、なりたい…。)
「彩華…」
「賢人…熱い…」
賢人のその熱。私の心の身に纏っているもの全てを、どうか焦がして。