デアウベクシテ
第13話~歩行者天国と愚か者
「彩華に、連れて行きたい所がある。」
「どこ?」
賢人は答えてくれなかった。でも楽しそうな嬉しそうな顔をしていた。初めて見る賢人の顔。
後日。百貨店やデパートが並ぶ歩行者天国。
「私この街好き。好きなものが売ってる訳でもないし、特に欲しいものもない。でも意味もなく歩いてお茶するだけで楽しい。」
「そうだったの?」
「うん。年齢層が同じか高いくらいの仕事の人、それから観光の人。色んな人がいて、みんなどんな生活送ってるんだろうって、ここでは思う場所。」
そんな場所を賢人とふたりで歩いている。私達はどう見られているのだろう。ちゃんと恋人同士でいられてるよね?
「彩華はどんな生活送ってる?」
「私?私は…何だろう。…普通の生活かな。」
ろくに考えもせずに答えてしまったことに、私は後悔する。
「特別なことはないの?」
「特別?って何?」
「俺は彩華が特別。」
こういうことを、賢人は平気でさらっと言う。自然なの。でも嘘でもない本当のこと。それがわかる私はやっぱり賢人のことをわかってる。
賢人の足が止まった。
(ここ?)
世界的に有名な、高級ブランドのジュエリー店。海外の有名人はよくこの店の指輪を買ったとか、よく聞く話。
「彩華。入ろう。」
「うん…。」
入店すると、賢人は店員に名乗る。
「神谷です。」
私達は2階のフロア。光輝くジュエリー。眩しかった。軽く案内を受け、今度はブースへ。『担当者』という人が待っていた。
「お待ちしておりました。」
私は愚かな女。何も気付かなかった。気付いていれば、後戻りできたのに。そんなつもり、なかったのに。目の前に、光輝く指輪がいくつか並んでいた。ひどく眩しい。どうしてキラキラではなく、ギラギラしているの?
「賢人?」
「彩華の好きなものを選んで欲しい。」
「どういうこと?」
「婚約指輪だよ。」
「婚約…?」
「そう、婚約指輪。」
「婚…約…。」
私の頭にバグが生じる。修正方法なんて浮かばない。そのバグから出た言葉。
「…いらない…。そんなの…いらない…。」
(え…?私今、何て言った…?)
ブースごと沈黙していた。
(私は何てことを言ってしまったの…。)
自分でもわかる体の震え。沸き上がる記憶、思い出、想い、恐怖。
怖い。私が脅えるなんて。
「彩華…?」
私は無意識に賢人の腕を握っていた。その手が震えている。
「彩華!」
私はハッとする。賢人に呼ばれ、目が覚める。賢人に誤解をされてしまうと思うと震えが増した。息も震え、声も震える。
「賢人…違うの…。そういう意味じゃないの…。賢人…違う…。賢人…。」
目が熱い。熱くてたまらない。どうして喉も熱いの。声が出ない。
「大丈夫だよ、彩華。帰ろう。」
気付けば私達はタクシーに乗っていた。どうやって店を出たのか、どうやってタクシーに乗ったのか、覚えていない。ただわかるのは、賢人の暖かさと賢人の心の暖かさ。賢人は私の肩を抱き、手を握っている。ぬくもりっていうの?そのぬくもりに、私は甘えてしまった。それしかできない私。
私は本当に愚かな女。本物の愚か者。
「どこ?」
賢人は答えてくれなかった。でも楽しそうな嬉しそうな顔をしていた。初めて見る賢人の顔。
後日。百貨店やデパートが並ぶ歩行者天国。
「私この街好き。好きなものが売ってる訳でもないし、特に欲しいものもない。でも意味もなく歩いてお茶するだけで楽しい。」
「そうだったの?」
「うん。年齢層が同じか高いくらいの仕事の人、それから観光の人。色んな人がいて、みんなどんな生活送ってるんだろうって、ここでは思う場所。」
そんな場所を賢人とふたりで歩いている。私達はどう見られているのだろう。ちゃんと恋人同士でいられてるよね?
「彩華はどんな生活送ってる?」
「私?私は…何だろう。…普通の生活かな。」
ろくに考えもせずに答えてしまったことに、私は後悔する。
「特別なことはないの?」
「特別?って何?」
「俺は彩華が特別。」
こういうことを、賢人は平気でさらっと言う。自然なの。でも嘘でもない本当のこと。それがわかる私はやっぱり賢人のことをわかってる。
賢人の足が止まった。
(ここ?)
世界的に有名な、高級ブランドのジュエリー店。海外の有名人はよくこの店の指輪を買ったとか、よく聞く話。
「彩華。入ろう。」
「うん…。」
入店すると、賢人は店員に名乗る。
「神谷です。」
私達は2階のフロア。光輝くジュエリー。眩しかった。軽く案内を受け、今度はブースへ。『担当者』という人が待っていた。
「お待ちしておりました。」
私は愚かな女。何も気付かなかった。気付いていれば、後戻りできたのに。そんなつもり、なかったのに。目の前に、光輝く指輪がいくつか並んでいた。ひどく眩しい。どうしてキラキラではなく、ギラギラしているの?
「賢人?」
「彩華の好きなものを選んで欲しい。」
「どういうこと?」
「婚約指輪だよ。」
「婚約…?」
「そう、婚約指輪。」
「婚…約…。」
私の頭にバグが生じる。修正方法なんて浮かばない。そのバグから出た言葉。
「…いらない…。そんなの…いらない…。」
(え…?私今、何て言った…?)
ブースごと沈黙していた。
(私は何てことを言ってしまったの…。)
自分でもわかる体の震え。沸き上がる記憶、思い出、想い、恐怖。
怖い。私が脅えるなんて。
「彩華…?」
私は無意識に賢人の腕を握っていた。その手が震えている。
「彩華!」
私はハッとする。賢人に呼ばれ、目が覚める。賢人に誤解をされてしまうと思うと震えが増した。息も震え、声も震える。
「賢人…違うの…。そういう意味じゃないの…。賢人…違う…。賢人…。」
目が熱い。熱くてたまらない。どうして喉も熱いの。声が出ない。
「大丈夫だよ、彩華。帰ろう。」
気付けば私達はタクシーに乗っていた。どうやって店を出たのか、どうやってタクシーに乗ったのか、覚えていない。ただわかるのは、賢人の暖かさと賢人の心の暖かさ。賢人は私の肩を抱き、手を握っている。ぬくもりっていうの?そのぬくもりに、私は甘えてしまった。それしかできない私。
私は本当に愚かな女。本物の愚か者。