デアウベクシテ
第22話~何か
 確かに感じる気持ち。新たに私の胸に引っ掛かる言葉。賢人の言葉。

『ウエディングドレス』

 愛する人の言葉。愛する人の希望。どうしたらいいだろう。これは賢人には聞けない。答えがわかる。

 賢人んちに向かう途中。そっとコンビニに寄った。雑誌を手に取る。分厚い結婚雑誌。これだけ分厚いなら、何かヒントはあるでしょ?

 夕食を作る前、賢人からのライン。残業とのこと。その日はくつくつ煮込んだドライカレーを作る予定だった。でも予定を変更。肉じゃがをことこと煮込み、野菜も柔らかい雑炊を作った。賢人の帰りが遅くなる時はいつも、心身共に落ち着いて休まるような、そんな食事を用意する。

 空いた時間。部屋でひとりペラペラと、結婚雑誌のページをめくる。沢山の情報量。逆に頭の中が複雑になる。

「ただいま、彩華。」
「おかえり、賢人。」

 私達はいつものように笑い合う。賢人は気付く。

「彩華、何見てるの?」
「うーん…。」

 賢人は覗き込む。

「結婚雑誌?」
「そう。何かないかなーって。」
「何かって?」
「その何か…。あ、ご飯用意するね。待ってて賢人。」

 いつもより疲れているだろう賢人。ゆっくり料理を食べてくれた。私達は夕食後、ふたりで雑誌を見る。

「色々載ってるんだね。」
「そうなの。だから余計わかんなくなっちゃう…。」
「焦ることないよ彩華。あ、コーヒー淹れるね。」
「うん。ありがとう、賢人。」

 めくった1ページ、思わず見入ってしまった。何もなくて全てが真っ白のチャペル。その真っ白の中、白く光っている男女の姿が、私の頭の中に浮かぶ。特集でもない、後ろのほうのページだった。じっと見る私に賢人は感付く。

「あったの?『何か』。」
「賢人?」
「なに?」
「私着る。ドレス。ウエディングドレス。」

 賢人は少し驚きながら、私の見ていたページを見て言った。

「彩華、式を挙げよう。」
「式…?」
「ふたりだけで式を挙げるんだ。」
「ふたり?そんなことできるの?」
「もちろん彩華が良ければの話だけどね。」
「それが良い…。賢人、それが良い。そうしたい。」

 賢人はいつもの優しい笑顔。

「じゃあそうしよう。ありがとう、彩華。」
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