デアウベクシテ
第26話~特別な街
私達は私の好きな街、前にも賢人と来た街に来ていた。三輪の華が咲く、指輪を見に行く為。
「今日も人が多いね。彩華、迷子にならないように。」
「迷子になんて…!」
私は賢人の手をギュっと握る。
「させないで…。」
賢人は微笑んだ。私の手をさらに強くギュっとした。
「行こう、彩華。」
賢人の笑顔、賢人の手、その手のぬくもり。私を安心させる。
前とは違う。
確かな安心が、確かに私の心《なか》にある。
私の左手の薬指。三輪の華が咲いた。サイズは合っていないけど、とても綺麗だった。雑誌で見たより何倍も。指輪って、こんなにも綺麗なモノなの?
「彩華、見せて。」
「賢人…どう?すごく綺麗な指輪だけど、私に合うかな…。」
「うん、合うよ。綺麗だ、彩華。」
賢人は指を、私の指に組む。
「彩華の手に、華が咲いた。」
私達はサイズを測る。刻印する文字を決める。特にこだわりのない私達は、西暦の数字とイニシャルだけ刻印を。
「彩華、コーヒーでも飲もう。どこかいい店ない?」
「えっと、ここからだと…こっち!」
私は賢人の手を引っ張る。自然と笑顔が出ていた。賢人も笑顔。
「彩華、そんなに急いだら迷子になるよ。」
「だからさせないでってば!」
私はすごく楽しかった。賢人も同じ?同じよね?
リベンジ?って、言葉が悪いし、なんか違う。そう、記憶が塗り替えられたの。そして好きな街が、特別な街になった。
これからはどんな街だって、きっと楽しい。賢人となら。そう思った私は、強くなれた気がした。『強い』の定義なんてわからないくせに。
でももし私が強くなれたとしたら、誰かを救えるかもしれない。結衣のような人を、救えるかもしれない。
「この街に、こんなに静かな店があるんだね。大通りから一本外れただけなのに。連れてきてくれてありがとう、彩華。」
「私のお気に入りのカフェなの。」
「ソファもあるし、コーヒーも美味しい。落ち着いた所だ。彩華はよく来るの?」
「この街に来た時はね。でも誰かと来るのは初めて。」
「じゃあ彩華の秘密の場所だ。」
「女には、海より深い秘密があるの。」
「何?教えて彩華。」
「それじゃ秘密にならないでしょ!」
賢人は笑った。私も笑う。一緒。同じ。賢人、私すごく楽しい。ありがとう、賢人。
「…気持ち良いよ…彩華…」
私も気持ち良い。賢人だから、気持ち良い。
「彩華も気持ち良いんだね…声が出てないよ…」
本当は叫びたい、賢人の名を。でも賢人と繋がっているところに神経が集中して、声が出ない。本当は叫びたいの賢人。わかって賢人。
「彩華…!」
賢人が強くなる。私は気が遠くなる。繋がったまま、一緒に溶けてしまいたい。
「…けん…と…けん…とっ…!」
ずっと繋がっていたい。体も、心も。
私に秘密なんて何もない。ましてや海より深い秘密だなんて。だってもう裸になれたから、心も言葉も何もかも。
人を愛すると、愛を知ると、人って変わるのね。視野が広がったの。余裕っていうの?それができたからだと思う。愛する人、知らない誰か、そして自分、全てを大切にしたいと思った。
昨日より今日、今日より明日。私は良くなっていくはず。なっていきたい。どんどん良くなっていって、成長とか、したりするの?『成長』したらどうなるかなんてわからないくせに。
でもわかっていることがある。私はきっと、少なくとも、賢人と出会う前より人間味を増した。
全部、賢人がさせてくれた。賢人が思わせてくれた。
賢人の為、人の為。ちゃんと地に足を付いて生きていきたい。誰かの為に、なりたい。
「賢人?」
「なに?彩華。」
「…やっぱり何でもない。」
「何でもなくないだろ?なに?彩華。」
「んー。」
何度も言うと、その言葉の価値が下がる。でも伝えられるうちに伝えたい。結衣の二の舞はしたくない。賢人の言った通り、後悔はしたくない。
「愛してるからね、賢人。」
「俺も愛してるよ、彩華。」
私達は笑い合う。
「ありがとう、賢人。」
「今日も人が多いね。彩華、迷子にならないように。」
「迷子になんて…!」
私は賢人の手をギュっと握る。
「させないで…。」
賢人は微笑んだ。私の手をさらに強くギュっとした。
「行こう、彩華。」
賢人の笑顔、賢人の手、その手のぬくもり。私を安心させる。
前とは違う。
確かな安心が、確かに私の心《なか》にある。
私の左手の薬指。三輪の華が咲いた。サイズは合っていないけど、とても綺麗だった。雑誌で見たより何倍も。指輪って、こんなにも綺麗なモノなの?
「彩華、見せて。」
「賢人…どう?すごく綺麗な指輪だけど、私に合うかな…。」
「うん、合うよ。綺麗だ、彩華。」
賢人は指を、私の指に組む。
「彩華の手に、華が咲いた。」
私達はサイズを測る。刻印する文字を決める。特にこだわりのない私達は、西暦の数字とイニシャルだけ刻印を。
「彩華、コーヒーでも飲もう。どこかいい店ない?」
「えっと、ここからだと…こっち!」
私は賢人の手を引っ張る。自然と笑顔が出ていた。賢人も笑顔。
「彩華、そんなに急いだら迷子になるよ。」
「だからさせないでってば!」
私はすごく楽しかった。賢人も同じ?同じよね?
リベンジ?って、言葉が悪いし、なんか違う。そう、記憶が塗り替えられたの。そして好きな街が、特別な街になった。
これからはどんな街だって、きっと楽しい。賢人となら。そう思った私は、強くなれた気がした。『強い』の定義なんてわからないくせに。
でももし私が強くなれたとしたら、誰かを救えるかもしれない。結衣のような人を、救えるかもしれない。
「この街に、こんなに静かな店があるんだね。大通りから一本外れただけなのに。連れてきてくれてありがとう、彩華。」
「私のお気に入りのカフェなの。」
「ソファもあるし、コーヒーも美味しい。落ち着いた所だ。彩華はよく来るの?」
「この街に来た時はね。でも誰かと来るのは初めて。」
「じゃあ彩華の秘密の場所だ。」
「女には、海より深い秘密があるの。」
「何?教えて彩華。」
「それじゃ秘密にならないでしょ!」
賢人は笑った。私も笑う。一緒。同じ。賢人、私すごく楽しい。ありがとう、賢人。
「…気持ち良いよ…彩華…」
私も気持ち良い。賢人だから、気持ち良い。
「彩華も気持ち良いんだね…声が出てないよ…」
本当は叫びたい、賢人の名を。でも賢人と繋がっているところに神経が集中して、声が出ない。本当は叫びたいの賢人。わかって賢人。
「彩華…!」
賢人が強くなる。私は気が遠くなる。繋がったまま、一緒に溶けてしまいたい。
「…けん…と…けん…とっ…!」
ずっと繋がっていたい。体も、心も。
私に秘密なんて何もない。ましてや海より深い秘密だなんて。だってもう裸になれたから、心も言葉も何もかも。
人を愛すると、愛を知ると、人って変わるのね。視野が広がったの。余裕っていうの?それができたからだと思う。愛する人、知らない誰か、そして自分、全てを大切にしたいと思った。
昨日より今日、今日より明日。私は良くなっていくはず。なっていきたい。どんどん良くなっていって、成長とか、したりするの?『成長』したらどうなるかなんてわからないくせに。
でもわかっていることがある。私はきっと、少なくとも、賢人と出会う前より人間味を増した。
全部、賢人がさせてくれた。賢人が思わせてくれた。
賢人の為、人の為。ちゃんと地に足を付いて生きていきたい。誰かの為に、なりたい。
「賢人?」
「なに?彩華。」
「…やっぱり何でもない。」
「何でもなくないだろ?なに?彩華。」
「んー。」
何度も言うと、その言葉の価値が下がる。でも伝えられるうちに伝えたい。結衣の二の舞はしたくない。賢人の言った通り、後悔はしたくない。
「愛してるからね、賢人。」
「俺も愛してるよ、彩華。」
私達は笑い合う。
「ありがとう、賢人。」