デアウベクシテ
第28話~白とカラー
「どうぞこちらです。ごゆっくり、ご覧になってください。」
「わぁ…。」
ここはチャペル。賢人と私、ふたりだけの結婚式を挙げる式場に来た。私達は見渡す。真っ白。
天井が高い。真ん中の十字架上の窓。そこから入る光が、より白を際立たせる。装飾をするような箇所すら、何もない。真っ白。
「白…眩しい…。」
「綺麗な所だね、彩華。」
私達は目を合わせ手を繋ぐ。言葉は要らなかった。
プランナーと話をしている最中。テーブルの隣の棚。ドレスが載っている冊子を私は見つける。
「あ…。」
「ドレスも見ていかれますか?本日は他のお客様のご予約が入っておりませんので、ご希望であればご覧になれます。いかがなさいますか?」
「彩華、どうする?」
「…じゃあ…見て…みようかな…。」
私達はドレスとタキシードが詰まった部屋へ移動する。私はドレスにもこだわりがなかった。ぽーっと見ていると賢人は言った。
「彩華。よく見てみなよ。」
「んー…、賢人はどういうのが良い?」
「彩華がいいと思ったのが良い。」
賢人に背を押され、ドレスを一着ずつ見ていく。ドレスの勉強を少しはすれば良かったと、私は少し後悔した。
フワフワしたドレス達が所狭しと並ぶ。確かに綺麗で豪華だけど、なんとなく何かが違うと思ってしまった私は困惑した。並んだドレスから私は目を離す。
壁際のボディ。そのボディが着ていたドレス。胸元と背中がVの字に、ざっくり開いているのが特徴的だった。ワンピースが少し豪華になったくらいのドレス。一番、真っ白に見えた。引き込まれる私。
「あの…これ…。」
「ご試着もできますよ。他に気になられたドレスもあればご用意致しますが、どうなさいますか?」
「じゃあ…これだけを…。」
「かしこまりました。それでは少々お待ちください。」
緊張する私に、賢人は微笑む。
私は試着をする。そのドレスはとても着心地が良かった。作りもシルエットもしっかりしているのに、生地が柔らかく肌触りも良い。私の体にしっくりきた。でも賢人の目にはどう映るだろう。
「どう…?賢人…。」
賢人は大きな笑顔で言った。
「綺麗だ、彩華。」
ドレスの他に色々と小物があったけど、私は細いティアラと薄いベールだけを選んだ。なるべくシンプルな私、そんな私を賢人に見てもらいたかった。そんな私が私らしいと、思ったのかもしれない。
「カラードレスはあちらになります。」
「え?」
スタッフが指した先には、色とりどりのドレスが並んでいた。結局どうするか決めていなかったカラードレス。私は賢人を見る。
「彩華に任せるよ。」
賢人はいつものように優しかった。
「うん…。」
せっかくだからと、私は一歩足を進めた。どのドレスも可愛らし過ぎて、目がチカチカするほど。
「どれも彩華に似合いそうだね。」
「そう?でも…。」
「彩華は『華を彩る』女性だ。だから華のあるドレスなんか似合うんじゃないかな。」
『華を彩る』また賢人に教わる、自分の名前。ろくな親じゃなかったけど、名前だけは良いモノを与えてくれたのね。私は初めて親に感謝をした。嬉しくなった私は笑顔で賢人を誘う。
「賢人も一緒に選んで!」
帰宅する新居。とても充実した日だった。
「綺麗だったな、ドレス着た彩華。彩華の為に作られたみたいに、彩華に合ってた。」
「そう?そんなことないよ。」
「そんなことある。当日はもっと綺麗なんだろうな。」
「そうだといいんだけど…。できるだけ、綺麗な私を見せたい…。賢人に…。」
充実した日の、濃密な夜。強く熱く、絡み付く。
「今日の賢人のキス。いつもと違う。」
「どう違うの?彩華。」
「んー…なんか…濃い。」
「濃い?」
「うん。だからもっとして。」
「もしかして彩華、キスだけで濡らしてる?」
「…そんなこと…ない…。」
「ほんとに?」
「ほんと…だからキス…賢人…」
「あ…確かめればいいのか…」
賢人の手、指。いつもより熱い。その指を、締め付けているのが自分でわかる。
「やっぱり…彩華嘘つきだ…」
「…ずるい…賢人…」
賢人、愛してるからね。
ありがとう。今日も、いつも、ありがとう。
賢人を照らす真っ白なドレス、華を彩るカラードレス。どっちも私、今日着ることができた。賢人の笑顔が楽しみで。
賢人に喜んでもらいたい。
賢人と一緒に笑いたい。
賢人と一緒に幸せになりたい。『幸せ』の定義なんてわからないくせに。
でも今、幸せっていうモノを感じているから、これからも、もっともっとと願うの?ねぇ教えて賢人。そして賢人もどうか感じていて、私と一緒の幸せを。
「わぁ…。」
ここはチャペル。賢人と私、ふたりだけの結婚式を挙げる式場に来た。私達は見渡す。真っ白。
天井が高い。真ん中の十字架上の窓。そこから入る光が、より白を際立たせる。装飾をするような箇所すら、何もない。真っ白。
「白…眩しい…。」
「綺麗な所だね、彩華。」
私達は目を合わせ手を繋ぐ。言葉は要らなかった。
プランナーと話をしている最中。テーブルの隣の棚。ドレスが載っている冊子を私は見つける。
「あ…。」
「ドレスも見ていかれますか?本日は他のお客様のご予約が入っておりませんので、ご希望であればご覧になれます。いかがなさいますか?」
「彩華、どうする?」
「…じゃあ…見て…みようかな…。」
私達はドレスとタキシードが詰まった部屋へ移動する。私はドレスにもこだわりがなかった。ぽーっと見ていると賢人は言った。
「彩華。よく見てみなよ。」
「んー…、賢人はどういうのが良い?」
「彩華がいいと思ったのが良い。」
賢人に背を押され、ドレスを一着ずつ見ていく。ドレスの勉強を少しはすれば良かったと、私は少し後悔した。
フワフワしたドレス達が所狭しと並ぶ。確かに綺麗で豪華だけど、なんとなく何かが違うと思ってしまった私は困惑した。並んだドレスから私は目を離す。
壁際のボディ。そのボディが着ていたドレス。胸元と背中がVの字に、ざっくり開いているのが特徴的だった。ワンピースが少し豪華になったくらいのドレス。一番、真っ白に見えた。引き込まれる私。
「あの…これ…。」
「ご試着もできますよ。他に気になられたドレスもあればご用意致しますが、どうなさいますか?」
「じゃあ…これだけを…。」
「かしこまりました。それでは少々お待ちください。」
緊張する私に、賢人は微笑む。
私は試着をする。そのドレスはとても着心地が良かった。作りもシルエットもしっかりしているのに、生地が柔らかく肌触りも良い。私の体にしっくりきた。でも賢人の目にはどう映るだろう。
「どう…?賢人…。」
賢人は大きな笑顔で言った。
「綺麗だ、彩華。」
ドレスの他に色々と小物があったけど、私は細いティアラと薄いベールだけを選んだ。なるべくシンプルな私、そんな私を賢人に見てもらいたかった。そんな私が私らしいと、思ったのかもしれない。
「カラードレスはあちらになります。」
「え?」
スタッフが指した先には、色とりどりのドレスが並んでいた。結局どうするか決めていなかったカラードレス。私は賢人を見る。
「彩華に任せるよ。」
賢人はいつものように優しかった。
「うん…。」
せっかくだからと、私は一歩足を進めた。どのドレスも可愛らし過ぎて、目がチカチカするほど。
「どれも彩華に似合いそうだね。」
「そう?でも…。」
「彩華は『華を彩る』女性だ。だから華のあるドレスなんか似合うんじゃないかな。」
『華を彩る』また賢人に教わる、自分の名前。ろくな親じゃなかったけど、名前だけは良いモノを与えてくれたのね。私は初めて親に感謝をした。嬉しくなった私は笑顔で賢人を誘う。
「賢人も一緒に選んで!」
帰宅する新居。とても充実した日だった。
「綺麗だったな、ドレス着た彩華。彩華の為に作られたみたいに、彩華に合ってた。」
「そう?そんなことないよ。」
「そんなことある。当日はもっと綺麗なんだろうな。」
「そうだといいんだけど…。できるだけ、綺麗な私を見せたい…。賢人に…。」
充実した日の、濃密な夜。強く熱く、絡み付く。
「今日の賢人のキス。いつもと違う。」
「どう違うの?彩華。」
「んー…なんか…濃い。」
「濃い?」
「うん。だからもっとして。」
「もしかして彩華、キスだけで濡らしてる?」
「…そんなこと…ない…。」
「ほんとに?」
「ほんと…だからキス…賢人…」
「あ…確かめればいいのか…」
賢人の手、指。いつもより熱い。その指を、締め付けているのが自分でわかる。
「やっぱり…彩華嘘つきだ…」
「…ずるい…賢人…」
賢人、愛してるからね。
ありがとう。今日も、いつも、ありがとう。
賢人を照らす真っ白なドレス、華を彩るカラードレス。どっちも私、今日着ることができた。賢人の笑顔が楽しみで。
賢人に喜んでもらいたい。
賢人と一緒に笑いたい。
賢人と一緒に幸せになりたい。『幸せ』の定義なんてわからないくせに。
でも今、幸せっていうモノを感じているから、これからも、もっともっとと願うの?ねぇ教えて賢人。そして賢人もどうか感じていて、私と一緒の幸せを。