デアウベクシテ
第31話~真っ白
 賢人の言う通り、私の為に作られたようにしっくりくるドレス。メイクは自然に、ヘアスタイルはルーズな編み込みのダウンスタイル。予定通り、細いティアラと薄いベールで完成。完成した私は、私の想像以上にキレイだった。こんな私がいたなんて。

 試着じゃない、賢人の目。緊張の瞬間。

「…賢人…。」

 私を見るなり賢人は微笑んだ。

「ありがとう、彩華。」
「え?」
「綺麗だ彩華。今までで一番。彩華が輝いてる。ドレス、着てくれてありがとう彩華。」

 微笑む賢人に確かめる。

「変じゃない…?」
「変なんかじゃない。」
「ドレスに着られてない…?」
「ちゃんと彩華が着てるよ。」
「ほんと…?」
「俺は本当のことしか言わない。」

 ホッとした私はやっと笑えた。でもこれから挙げる式。賢人とふたりだけとは言え、どんなものだろうと緊張する私。賢人はスタッフに言った。

「すみません、少しふたりにしてもらえませんか?」

 スタッフが部屋から出て行く。私は不思議というより少し不安になる。

「賢人どうしたの?何かあったの?」

 賢人は私の肩を抱き、私をそっと鏡に向ける。鏡に映る、賢人と私。賢人は私を後ろからギュッと抱き締めた。それはきっと、初めて賢人が私を抱き締めてくれた時と同じ姿。こんなに微笑ましい画だったのね。

 でもその時とは違う想い、想いやり。生まれた愛。目を閉じると、今まで歩いてきた道からの景色と、今までの賢人の全てが浮かぶ。それが体中に行き渡る。目を開け鏡の中、目を合わす私達。賢人は微笑んでいた。

「彩華?」
「なに?賢人。」
「俺今すごく幸せだ…ありがとう彩華。」

 私は胸が高鳴る。この高鳴りはきっとそう。

「私も…私も幸せ…賢人。」

 私達は笑い合った。そして私は気付く。

「…え…?」

 賢人はスカートをめくる。レースをめくる。

「賢人…?」

 シンプルなドレス。瞬く間に賢人の手が私に辿り着く。

「賢人だめ…」

 私は賢人の腕を掴んだ。

「大丈夫だよ彩華。」

 激しい賢人の指。耐えられなくなりそう。その賢人の指は、すぐに私の中に。

「んっ……!」

 私は声を漏らしてしまった。緊張が、溶けたくないのに溶けていく。膝が震え、力がどんどん抜けていく。

「賢人やっぱり…だめ…」

 私は鏡に両手を付いて、精一杯の声。

「賢人…ドレス…汚れちゃ…」
「大丈夫、今日は中に出すから…」
「でも…」
「彩華…もうドレス濡らしてるかも…聞こえる?彩華の音…こんなに濡らして…やめられる?」
「いじ…わ…る…」
「もう充分だ…」

 そう賢人は言った後、すぐに賢人が私の中に入ってしまった。

「だめっ……!!」

 賢人は私の腰を両手で掴む。そして動かす。

「彩華、もっと腰突き出して…」

 言われた通り、私の腰は上を向く。もう賢人しか考えられない。私から理性や我慢が消える。賢人の腰の動きとシンクロする私の声。大人しくしていられない。いつまでも賢人が激しくて。

「…彩華…前見てごらん…」
「え…?」
「…今日は特別綺麗だ…彩華…」

 白に包まれた私と、白に包まれた賢人が見えた。今、繋がっている。

 私達は真っ白だった。
< 31 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop