如月の空の下、光る君を見つけた。
「君、大丈夫?オレに構わなくていいから。別に1人でいたって寂しくないし、むしろその方が気が楽なんだ。仕事で色んな人と会って精神すり減らしてるからこういう時くらい解放されたい」


「ごめん...。詩央くんの気持ちも考えないで色々やっちゃって。バカだから人の気持ち読み取れないんだよね。本当にごめんなさい...」


「謝らなくていい。とにかくオレは、君がオレの存在をばらさずにおとなしくしててくれればそれだけでいいから」


私はこっくり頷いた。


ここまで拒絶されたらもう成す術がない。



「今日はごちそうさま。一応明後日来る予定だからそこで何かお返しする。じゃ」



泣きたいけど泣けなかった。


悲しいし悔しいし辛いし...苦しい。


私の王子様だと思っていた人が王子様じゃなかったなんて、最悪の魔王だったなんて信じたくないよ。


耐えられないよ。


こんなに悲しいなら、


こんなに辛いなら、


こんなに苦しいなら、


出会わなきゃよかった。


知らなきゃよかった。


ずっと画面の向こう側の届かないキラキラの王子様、如月陽翔くんのままがよかった。



「陽翔くん...」



私はお弁当箱をしばらく見つめ、チャイムが鳴ってから慌てて教室に戻ったのだった。





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