空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
私がお風呂から上がってくるとリビングで我が家の様子を見守ってきた一昔前の時計は午後11時48分を指していた。

しかし、父はビールとさきいかを食べながらスマホで動画を見ていた。

チラ見するとそれは若い女性が出ている動画ではなく、ごく一般的な男4人組のチャレンジ動画だった。

女性の動画を見ていたらどうしようかと思っていたけど、そんなことはなくてひとまずほっと胸を撫で下ろした。


「おお、やっときた。碧萌が来るまで待ってたんだよ~」


このオヤジ、酔ってるな。

私はもう寝るから別に構わないけれど。


「無視はかなしちいぞぉ、碧萌。今日迷子になったらしいじゃないかぁ?大丈夫だったかぁ?」

「大丈夫だよ。大丈夫じゃなかったらここにいないよ」

「そっかぁ。そうだなぁ。良かった良かった。いやぁ、昔もそんなことあったからなぁ。あの日も結構捜したもんなぁ」


父にとってもあの日は相当印象深いらしい。

そう言えばあの日あの後どうしたんだっけ?

ちんぴらに絡まれて途中で記憶が途切れたとかと思ったけど違っていた。

私、覚えてない。

恐らく両親と再開して安堵したからそれまでのことはどうでも良くなって忘れてしまったんだ。

あの子どうしてるかな?

あの色白でもやしみたいな男の子。

助けてもらったのにほとんど覚えてないなんて失礼過ぎる。

そういう薄情なところも矯正ポイントだな。

なんて思いながら冷蔵庫から麦茶を取り出しごくごくと豪快に飲み干した。

真夏の夜は暑くて発汗しまくりだから飲んでも飲んでも喉が乾く。

からっからの体には麦茶が一番だと私は思っている。


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