空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
「お父さん私寝るね。お父さんもそのくらいにして早く寝てよ」

「りょぉかぁい」

「じゃあね。お休み」

「ちょちょちょ、ちょっと待て」

「何?」


父がティーシャツの裾を掴んでくる。

だからそういうところが年頃の娘に煙たがわれるんだって。

緋萌に何回もむやみに触るなって言われたのにスキンシップ取りたがるし、本当に困ったオヤジだ。


「碧萌付き合ってるやついるんだってなぁ。今度会わせてくれよぉ」

「は?!いやいや、いないよ!」

「別に隠す必要はない。碧萌も来月で18だ。そういう人がいるのも不思議じゃない」


母が颯翔くんのことを話してしまったようだ。

振られたのに付き合ってるなんて勘違いされても困る。

可能性がゼロになったんだよ、私。

今日自分の気持ちにピリオド打ってきたんだよ。

わざわざかさぶたを剥がさないでほしい。


「本当に違うから。じゃ、おや...」

「碧萌が迷ってもなぁ、碧萌のことをちゃんと見つけてくれてちゃんと手を繋いで真っ直ぐ歩いてくれる人なら、俺は...安心だぁ!」

「うん...そうだね。じゃあ、お休み」


酔った父を置いて私は自室に向かった。

緋萌の部屋からはまだガサゴソ音がする。

私は部屋に入るや否やノートも教科書も開くことなく、ベッドにダイブした。

頭の中で父の言葉が反芻する。

私が迷ってもちゃんと見つけてくれる人、

ちゃんと手を繋いで真っ直ぐ歩いてくれる人。

それが私の運命の人...。

私、見つけられるかな。

早く見つけたいな。

エアコンのタイマーと目覚まし時計をセットして私は目を閉じたのだった。



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