空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
思い出が甦った。

死ぬ間際に見る走馬灯ってやつなのかな?


「......ろ!......きろ!......っ!」


誰?

誰の声?

誰かが私を呼んでいる...。


「しっかりしろ!起きろっ!起きろよ!」


私、寝てたの?

寝てるというより、意識不明だった、に近い気がするけれど...。

目をうっすらと開けると、視界があの美しい顔でいっぱいになった。

彼の髪から垂れてくる雫が私の頬に落ちて流れていく。

いつの間にか私、リュックを抱えたまま地面に横になっていたみたい。

こんな格好見られちゃうなんて恥ずかしいな。


「立てるか?」

「ごめんなさい...。寒すぎて、手足が...」

「分かった。おぶるから背中に乗って」


本来ならキュンキュンする名シーンなのだろうけれど、今の私にはそんな余裕ない。

さっきより止んで来たみたいだけど、まだ神様は泣いている。

私も泣きたいよ。

颯翔くんの背中を汚していいならいつだって泣けるよ。

だって今、悲しいから。

だって今、悔しいから。

だって今...嬉しいから。

色んな感情がごちゃ混ぜになって訳がわからなくなってとにかく泣きわめきたいから。

背中に飛び乗り、衣替えしたばかりの白いシャツに顔を埋める。

あの日と同じ優しいフローラルの香りがした。


< 39 / 112 >

この作品をシェア

pagetop