空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
「あのさ、家どこ?」

「家は...ここから徒歩30分くらいかな」

「案内して」

「もちろんです...」


こんなびしょびしょでぼろぼろなのに、少しずつ気持ちが落ち着いていく。

この香り、感じる体温、呼吸のリズム...。

不思議...なんか懐かしい感じがする。

この公園よりちょっと下ったところはここ十数年で開拓されたニュータウン。

そこに私の家や砂原家がある。

ニュータウンの中では古株。

最初は戸数が少なかったからすぐ顔見知りになったのだ。

また昔のことをぶり返そうとして止めた。

終わったはずの悲しみが深まるだけだから。


「次はどっち?」

「右に曲がって下さい」


事務的に淡々としている颯翔くん。

約束の時間は過ぎたけど、助けてもらっちゃってるから責められない。

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