空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
午後9時45分。

リビングルームに2人きり。

恐らく2階で妹は勉強中。

受験生だからね。

降りて来ないかな...。

いきなりこの展開はきつい。

いざこんな状況になると何を話せばいいのか、分からない。

考えよう。

考えるんだ。

絞り出すんだ。

う~ん...。

う~ん...。


――ぐう~っ...。


突如盛大に鳴り響いた呑気な音。

えっ?

ちょっと待って。

今のって...。


「えっと、その...颯翔くん、お腹...」


頬を真っ赤にし、そっぽを向く颯翔くん。


「生きてる証拠だ」

「ふふふっ。はははっ!」

「何だ?悪いか?」

「颯翔くんでもお腹鳴るんだなって思って...!はははっ、ふはははっ!」

「わ、笑うな。こっちだってそれなりに恥ずかしいんだから」


恥ずかしいっていった。

なんだ、意外と素直じゃん。

で、やっぱり面白いよ。

私、人に興味が無くてドライでクールな無駄にイケメンな人に恋しちゃったのかと思ってたんだけど、どうやら違うみたいだ。


「私、料理へたっぴだけど、温めるのは得意なんだ。そこに座って待ってて」


学校で一度も2人きりになれなかったのにまさか自宅でこんなことになるとは思ってもいなかった。

妹が降りて来る可能性もあるけれど、とりあえず今のこの状況に感謝して、そしてこの状況を作り上げた自分を誇りに思って夕飯を温めるとしよう。


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