空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
食事を終え、食器を洗おうとパジャマの袖をまくっていると颯翔くんが私の隣に来て水を出した。


「オレがやるよ。夕飯ご馳走になったし、今晩お世話になるし。一宿一飯の恩義だ」

「そ、そう」


随分律儀だな。

ご両親の教育はちゃんとされてきたみたい。

私は側にいてもそわそわするだけなのでソファに座って待っていた。

すると、階段の灯りが付き、トントントンというスリッパの音が大きくなってきた。


「お姉ちゃーん、お帰りー。いつの間に帰ってきたの?って、ええ?!」

「こらっ!うるさいっ!夜に大声出さないの!」

「だ、だ、だって、お、お、男...」


これは厄介なことになってしまった。

妹になんて説明すればいいんだろ?

友達?

知り合い?

知り合いと言えば知り合いだけど、知り合いを家に泊めることになったって正直にいうのもなんか...なんか変。

私が頭を捻っている間に颯翔くんは動き出した。


「こんばんは。僕はお姉さんの友人の名波颯翔と申します。電車が止まって帰る手段がなくなってしまい、こちらにお邪魔することになりました。誠に勝手ながらお世話になります」


か、か、完璧...。

なんで年下にこんな丁寧なの?

私の妹なんだから、もっと砕けていいのに。


「そ、そそ、そうですか。今日は雨がうるさいと思いますが、ゆっくり休んでいって下さい」

「お気遣いありがとうございます。お勉強頑張って下さい」

「は、はは、はいっ」


妹は冷蔵庫から自分専用の麦茶を出してゴクゴクと飲むとさっさと2階に消えていった。


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