空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
「あのさ、その...ここ、オレと樹の休憩所なんだ。だからそのうち樹も来る」

「あっ、そうだったんだ...」


通りで昼休み中校内探し回ってもいないわけか。

屋上なんて考えもしなかった。

こんなに空を独り占め出来て、少し遠くをみればコバルトブルーの海が見える絶景スポットを見逃していたなんて...。

私は悉く抜けが多い人間だ。

大人になって仕事ってなったら毎日上司に怒られる人の典型だよ。


「来て...いい」

「えっ...いいの?」

「いいって言ってる。何回も聞くな」


ふふっ。

そういうツンデレなところ...好きだな。

なぜかは分からないけど、颯翔くんとは初対面の気がしないんだよね。

一緒にいると落ち着くというか、安心するというか。

それはこの柔軟剤の匂いのせいなのかもしれないのだけれど。

潮風に吹かれて今日もいい香りが颯翔くんの周りに漂っている。

私は心が軽くなって少しだけ元気を取り戻せた気がした。


「颯翔くん、ありがとう」

「何だよ、急に」

「ありがとうは言っても減らないからね。言いたいときにちゃんと言おうと思って」

「ったく、ほんと変だな」


変わり者でも何でもいい。

何と呼ばれたって構わない。

私は颯翔くんが好きで、颯翔くんの側にいたい。

それが答えだ。

やっぱりこれが答えなんだ。

たっくんに言おう。

黙ってちゃダメだ。

大事な人だからこそ、自分の気持ちをきちんと伝えて理解してもらいたい。

私は青空に手を伸ばした。

掴みたいものを掴んで手からすり抜けて行かないように握りたい。

握りしめたい。

そう強く思った。
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