空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
私がその質問をした直後颯翔くんが突然立ち上がった。


「悪いがオレは先に戻る」

「ちょっと待て!おい、颯翔!」


颯翔くんは勢い良く扉を開けると、バタンとものすごい衝撃音を鳴らして去っていった。

砂浜に取り残された2つの貝のように互いにしばらく黙って潮風に吹かれていた。

やがて重い口を開いたのは樹くんだった。


「碧萌ちゃんにまだ話してなかったよな、颯翔のもう一人の友達のこと」

「うん...」

「それは、おれたちの幼なじみで、上川青空(かみかわそら)っていう女の子なんだ」


女の子の幼なじみがいたなんて...。

針が指に刺さった時のように鈍い痛みが心に走った。


「青空は生まれつき心臓が弱くて入退院を繰り返してて留年してまだ2年なんだ。颯翔は今もわざわざ県外の大学病院まで週1で見舞いに行ってる。青空は言ってみれば颯翔の初恋の相手だ。医学部志望なのも青空の病気を治す手助けをするためなんだよ」


病気の幼なじみで初恋相手...。

きっと颯翔くんは今も彼女のことが好き。

それじゃあ、私は...私はどうなるの?

こんな大事なことを後だしってずるくない?


「何であの日言ってくれなかったの?女の子の友達がいてしかも颯翔くんの好きな人なのに私なんか必要ないじゃん」

「そう言われればそうかもしれないけど、おれは颯翔に普通の高校生活を送ってほしくて碧萌ちゃんにお願いしたんだ。颯翔が青空を想うのは分かる。でも青空に囚われすぎて颯翔は部活にも入らず一心不乱に勉強してきた。だけど高校生活も後1年。おれや青空以外の子とも仲良くなって、高校生活楽しかったって思って卒業してほしいって思った。ごめん。完全におれのエゴだ。本当にごめん...」

「樹くんの気持ち、分かるよ。分かるけど...ちょっと考えさせて」


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