空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
その日の帰り道だった。

台風12号が接近中らしく、少し風が強い。

空には分厚い雲がかかっていて神様が不機嫌なんだと思う。

神様、私も同じだよ。


「碧萌ちゃんなんか顔色悪いけど、大丈夫?」

「えっ...あ、うん。大丈夫」

「大丈夫じゃないよね?わたしでよければ話聞くよ。もしかしてあの...名波颯翔くんと何かあったの?」

「何でもないよ。ほんと大丈夫だよ」


夏帆ちゃんはいいよね。

海くんと上手くいってるもんね。

いじめられてたと思ったら今ではサッカー部の専属栄養士みたいなもんだもんね。

そんな順風満帆に行ってる人に私の気持ちなんて分からない。

好きな人に毎回好きな人がいてちっとも思ってもらえない私の気持ちなんか...分からないんだよ。

唇をぎゅっと噛んで夏帆ちゃんにぶつけないように耐えた。

ここで言ってしまったら取り返しのつかないことになる。

友人を失いたくない。

自分自身を性格がひん曲がった悪い子にしたくない。

これ以上苦しみたくないんだ。


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