空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
家に帰ると真っ先に顔を洗い、部屋に引きこもった。

暑いのに布団を被って吠えた。

吠えて吠えて吠えまくった。


「なんで今さらあんなこと言うの!そんなこと言うくらいなら最初から近づかないでよ!邪魔したくせに謝るなよ!なんで上手くいかないのよ!なんで邪魔ばっかりするのよ!なんで私ばっかりこんな想いするのよ!おかしいでしょ?!ふざけんな!ざけんな!ざけんな!ざけんな!...くっ......ぐすっ......苦しいよ、辛いよ、もうやだよ......。私、人を好きになる権利ないのかな......」

「ちょっとお姉ちゃーん。大丈夫ぅ?」


緋萌が心配してくれているようだけど、答えることは出来ない。

答えなくても分かるだろう。

大丈夫なんかじゃない。

この通り、荒れ狂ってるよ。

津波のように押し寄せてくる黒々しい感情から高台に逃げるのは難しい。

このまま飲み込まれたらどうなるんだろう。

考えないようにしても浮かんでくる顔、思い出す言葉...。


――2人は幼なじみで長い時間大切な時を過ごして来たのに。

――それなのにわたしなんかが邪魔して...。

――本当にごめん...。


私は言いたくない。

こんなこと言いたくないよ。

本当に好きなら、

本当に好きな人を想うのなら、

本当に誰も傷付けたくないなら、

傷付けていいのは自分しかいない。

それしか選択肢はないんだ。

夏帆ちゃん、ごめんね。

そしてありがとう。

私、決めた。

やっぱり私は......

いつだって、

脇役だ。

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