空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
しかし、次の瞬間。


「オレの友達に何してんの?」


この声は...。

私は光を求めてその声の方へ顔を向けた。


「さ、颯翔くん...」

「瀬生碧萌はオレの友達だ。これ以上傷付けたらオレもそれなりの対応をする。例えば、先生にチクって退学処分とか。それから...」

「す...すみませんでした!」


女子たちは足を震わせながらも全力疾走して去っていった。

私が唖然とドアを見つめていると、颯翔くんが私の隣に腰を下ろした。


「瀬生さん、怪我は?」

「手のかすり傷だけだから大丈夫」

「ちょっと見せて」


私の手をまじまじと見る颯翔くん。

その瞳はいつも美しいのだけれど、今日はどこか影があった。


「保健室に行こう。ちゃんと手当てしないと傷口からバイ菌が入って大変なことになるかもしれないから」

「分かった。じゃあ、私は行くね。颯翔くんは帰っていいよ。このくらいの傷自分でなんとか出来るし」


私は立ち上がり、歩きだした。

しかし、蹴られたお腹が痛み、ふらつく。


「大丈夫じゃないだろ。もしかして蹴られた?」

「ちょっとね。でも本当に大丈夫。だから颯翔くんは...」

「帰らない」


颯翔くんの声が鮮明に聞こえた。


「オレのせいで傷付いたのにほっといて帰れるわけないだろ。ほんと......バカだな」


ば、ば、バカ?!

私、今、颯翔くんにバカって言われた。

言った本人は頬を紅潮させちゃってる。

キャラじゃないこと言わなくていいのに。

今さらキラーワードで喜ばせられたって困るよ。


「ふふふっ」

「な、何だよ」

「別に。それより、お腹痛いから支えてもらえるかな?」

「わ、わわ、分かった。最初からそう言ってくれ」


動揺を隠しきれない颯翔くんの腕にしがみつきながら私は保健室に向かっていったのだった。

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