空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
「はい、これで大丈夫よ」

「ありがとうございました」

「お腹のことだけど、念のため病院でレントゲン検査をしてもらった方がいいわね。連絡しておくけどかかりつけの形成外科医院か総合病院ある?」

「いえ、ないです」


私がそう答えると、直ぐ様颯翔くんが口を挟んできた。


純海堂(じゅんかいどう)総合病院にお願いします。僕の父がそこの循環器内科で働いているので形成外科にも知り合いの医師がおりますので」

「あら、そうなの。じゃあ、ワタシ病院とタクシー会社に連絡してくるから帰る準備して待っててね」


養護の先生があわただしく飛び出して行き、2人きりになる。


「颯翔くんのお父さん、あの大きな病院で働いてたんだ」

「まあ」

「ありがとう、教えてくれて」

「オレも...オレもちゃんと着いて行くから礼はまだいい」


また赤くなってる。

颯翔くんは本当に照れ屋さんだな。


「前言ったじゃん。ありがとうは減らないから言いたい時に言うって。今も言いたかったから言っただけだよ。ちなみにまた後で言う」

「そ」


今度は急に素っ気なくなった。

掴めそうで掴めない。

それが颯翔くんなのかもしれない。

私は颯翔くんに取ってきてもらったリュックの中身を確認しながら先生が来るのを待ったのだった。




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