空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
私が待合室で待っている時だった。


「あのさ...その...色々とごめん」

「ふぇっ?何急に」

「いや、その...あの日感情に任せて飛び出していったり、今日はこんな目に遭わせたし...。ごめん...」

「いいよ。私別に気にしてないから」

「って言ってるだけだ。本当は傷付いてる」


えっ...。

なんで?

なんで分かるの?

私の気持ちなんか分からなくてもいいのに。

分かったら私も颯翔くんも辛くなるだけ。


「瀬生さんは不器用だ。自分では隠してるように思っても分かる人には分かる」

「そ、そっかぁ。それはちょっと...」


ちょっと、いやかなり困る。


「だから...だから、言った方がいい。手紙書いてた時みたいに伝えたいことがあれば伝えればいい。瀬生さんの直球はオレが受け止める」

「あ、ありがとう」


照れてるのがバレないようにそっぽを向いたつもりなんだろうけれど、私にはバレバレだよ。

私も颯翔くんも隠すのは苦手みたいだ。

カメレオンにはなれないね。


「瀬生さーん、瀬生碧萌さーん、2番の部屋にどうぞ」


そうこうしてる内に順番が来てしまった。


「じゃあ私行ってくるね」

「あぁ」


颯翔くんの優しさに触れる度、私の心は小さな傷を作る。

かさぶたを張っていてもそれを剥がして傷は同じ場所を少しずつ削っていく。

深く深く傷ついたらそこから出血するんだ。

その血は止まらない。

全身を通う。

優しさに満たされるようでそうではない。

血栓となれば血管を傷付け、毒に変われば全身を蝕む。

蝕まれて悲しみや苦しみに変わる。

それが恋という病なのかもしれない。

精密なレントゲンにも写ることはない。

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