上司は優しい幼なじみ
淹れたてのコーヒーの香りが充満する。
匂いを嗅いでいるだけでリラックスできそうだ。

カップを持ち、壁に寄りかかる。
真由美ちゃんと半田さんはこれからデートか…いいなぁ。
たっくんも、仕事とはいえ気心の知れた仲間だから、山本さんと二人で食事することもあるだろう。
このまま日本に帰ってこないで、向こうに永住してそのまま結婚…とかなったらどうしよう。

「あー、ダメダメ!そうやってマイナス思考になったらダメ!」

誰もいない給湯室に私の声が響き渡る。
気持ちを落ち着かせようとコーヒーを飲んだ瞬間、あまりの熱さにカップを落としてしまった。

「うわー…またやっちゃった…」

猫舌なんだ、私は。
どうして自分のことを忘れるのだろう。

肩を落とし、ペーパーナプキンを数枚とって床を拭き始める。


「…相変わらず、熱いのは苦手なんだ?」

「えっ…」

聞き覚えのある声、大好きな声。
あり得ない…と思いながらも、顔を上げ声のする方に目をやった。

その人物は私と同じように腰を落とし、ペーパーナプキンで床を拭き始める。

これは、幻覚?私、変な薬でも飲んだっけ?

近距離で視線が交わる。
その後小さく笑みを浮かべ、内ポケットからカードケースのようなものを取り出した。
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