年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 するとその時、男性の瞼がピクリと小さく震える。次いで長い睫毛を割り、鮮やかなブルーグリーンが現れた。
「ずっと抑えていて大変だっただろう。もう、大丈夫だ……」
 男性の形のいい唇が開かれて、最初に耳にした時よりも、しっかりとハリのある声を聞く。その目も寝入る前とは一転して、今はしっかりと生気が宿る。どうやら体から大分毒が抜けてきたようだった。
「すまんが、あの水を使わせてもらえるか?」
「もちろんです! これはあなたのために汲んで来たものだから、遠慮しないで使ってちょうだい」
 水が張られた桶を示して問われ、私は慌てて桶と共に乾いた手ぬぐいを差し出した。
「すまないな。表で汚れを落としてくる」
 男性は桶と手ぬぐいを受け取ると、しっかりとした足取りで立ち上がり、戸口に消えた。
 
 ……え? うそ。
 戻って来た男性を見て、私は衝撃に固まった。
 血と泥を洗い落とした男性は、先ほどまでとはまるで別人のようだった。
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