年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 その声を耳にした瞬間、心臓がバクバクと断末魔のように鳴り響く。体から段々と血の気が引いていくのが分かった。
「はい、たしかにリリア様が井戸からこちらの方向に走っていくのを見ました」
 私はこれまで、行動には慎重に慎重を重ね、周囲への警戒を怠った事は一度もなかった。だけど先ほど水を汲みに行った時は、事を急ぐあまり周囲への警戒を忘れてしまっていた……! 自分の迂闊さを呪いながら、滲む涙を堪えるようにギュッと瞼に力を込めた。
 迫る二人の足音を恐々とした思いで聞く。その足音が、小屋を目前にしてピタリと止まる。
「其方はもうよい、小屋の中は儂が見ておく」
 聞いた直後は、お義父様が侍女に語った言葉の意味が分からなかった。
「え? しかし……」
「ここから先はもうよいと言うておろう。其方は屋敷に戻れ」
 困惑の声を上げる侍女に、お義父様がきつい口調で命じる。
 ……お義父様は侍女を帰らせて、一人で小屋に入ろうとしている! そこには果たして、どんな意図があるというのか。
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