年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 スコット子爵夫人の笑顔の残像が消えると、私は叶わぬ願いを振り払い、ゆっくり瞼を開いた。
「スコット子爵領とスチュワード辺境伯領は隣接している。ニルベルグ王国と広く国境を接しているのはスチュワード辺境伯領だが、スコット子爵領も一部国境に接している。ニルベルグ王国の王都に向かうには、どちらの領からでも距離的にはさほど変わらん。これがスコット子爵夫人との一旦の別れにもなる、スコット子爵領を経由するルートで帰国しよう」
 セラヴィンさんが口にしたのは、まるで私の心の内側を読んだみたいな台詞だった。
 ……だけど、セラヴィンさんの言葉は嘘ではないが、必ずしも正しくない。距離的にはそう変わらずとも、スチュワード辺境伯領から直接国境を越えた方が、道のりは平坦だ。
 だからこれは、私への心遣いで取られたルート……。
 胸が詰まってしまい、私は声にならない声で頷いてみせるのが精一杯だった。セラヴィンさんは朗らかな笑みでトンッと私の肩を抱くと、玄関の外へと促した。
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