Your Princess
蘭が私を嫁にしてくれたのは、単純な理由だ。
お兄様に借りがあるからだ。
お兄様に「妹を頼む」とでも言われたのは目に見えてわかる。
でなきゃ、あの男が私の面倒なんぞ見るわけないのだ。

「ムカツク。本当にあの男」
自分の部屋に戻って。
机を前に座り込む。
手を拳にしてガンガンと机を叩く。
どうして、こんなに腹が立つんだろう。

蘭にとって、私はゴミみたいなものだ。
いや。ゴミのほうが価値があるって言われちゃうかも。
頭を抑え込んでいると。
トントンっとドアが叩く音がした。

「失礼します」
いきなり男の人の声が聞こえてきたので。
私は「きゃー」と小さく悲鳴を上げた。
もう、今日から家庭教師が来たの?
しかも、男性だなんて聴いてない。

とっさに振り返ると。
見覚えのある顔に思考が停止した。
「久しぶりだね、カレンさん」
目の前に立っていたのは、ライト先生だった。
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