求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
あの時と同じ状況なのに、今はとても遠く感じる。
でも遠く感じるのは、今の距離に満足していない証拠だ。
(私は、才賀君にもっと近づきたいと思ってるんだよね)
自分から望みを断つ行動をしたくせに、未だに同僚としての距離では納得できていない。
嫌になる程未練たらしい。
もう何をしても諦められないのだと気付いている。
(やっぱり物理的に距離を置くしかない)
今はその気持ちを見透かされないように、気をつけないと。
感情を捨てるように、小さく息を吐く。
メニューを手にすると、彼の声がした。
「水島さんは何にする?」
「まだ。選べなくて」
何気なく答えて、以前もこんな会話をしたのを思い出した。
(あのとき、才賀君は何て言っていたっけ……そうだ、それなら俺のおススメを頼んでもいい?って言ったんだ)
きっと結衣に自分が好きなものを、美味しいものを食べさせたいと思ってくれたのだ。
しかも結衣の好き嫌いまで把握していた。
(私、本当に大事に思って貰ってたんだな)
切なさがこみ上げる。黙ったままの結衣に遥人は少しだけ目を細めた。
「迷ってるなら、ゆっくり選んで」
「……うん、ありがとう」
今も遥人は優しい。でもそれは以前とは違うものだと実感した。