求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

「俺は以前にも水島さんとこの店に来ているんじゃないか?」

「違うよ。壮太さんも勘違いだったって言ってて……」

「壮太と話す前から、もしかしてと考えていた」

「……どうして?」

なぜそんな風に思うのだろう。

「水島さんが疑惑を持つような発言をしたから。まるで俺と一緒に出かけたような口ぶりだった。多分無意識に出た言葉だったんだろうな。本当は言うつもりが無かったから途中で黙った」

彼は思い出すようにゆっくりと言う。電車内の会話だというのは直ぐに分かった。

グランデがある駅で降りたことがあるかを聞かれ、返事をしたときのこと。

『ううん。そう言う訳じゃないよ。ときどき待ち合わせで使うくらい。最後に行ったのは才賀君と……』

結衣がつい彼の名前を出してしまったことを、聞き逃さなかったのだ。

(あんな何気ない会話の一瞬で……)

その隙の無さに驚愕する。

(でも、才賀君はいつもそうだった)

事故の後、遥人とこんな風に話す機会が何度かあった。

たいてい結衣が隠しておきたいことを遥人が追及してくる形だ。

その度に鋭く切り込まれ、または結衣の心に響く懇願をされ、真実を告げてきた。

彼が鋭くて僅かな違和感を見逃さないから、結衣がうかつで、隠しきれていないから。

結局、遥人が望む通り、結衣は正直に答えていた。

それでも彼の記憶は戻らず、関係は変わらなかったけれど。
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