求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
壮太に挨拶をしてグランデを出て駅に向かう途中、遥人が立ち止まり結衣の手を掴んだ。
「才賀君?」
「このまま帰って離れたくない」
ドクンと鼓動が高鳴った。
「帰りは送る。もう少し付き合ってくれないか?」
時刻は十時三十分。今日はまだ週初めの火曜日で、明日はもちろん朝から仕事だから大人しく帰った方がいい。
だけど断るなんて選択は結衣にとって有り得なかった。
「うん……私も才賀君ともっと話したい」
遥人はほっとしたように笑みを浮かべる。
「よかった」
遥人は結衣の手を掴んだまま、駅とは別の方に向かう。
どこに行くのか分からないけれど、行き先は気にならなかった。
それよりも、遥人と手を繋いで歩いていることの方に意識が向いている。
彼の手の温かさを感じ、嬉しい、そして少し切ない。
(本当に才賀君の気持ちが戻ったんだ)
遥人はいつから想ってくれていたのだろう。
会社では少しもそんな素振りは無かったから、分からない。
しばらく歩くと遥人は高層ホテルの前で立ち止まる。
(え? ホテル?)
内心慌てていると、まるで心を読んだようにフォローが入った。
「この上にバーがあるんだ。そこで少し飲もうと思うけどいい?」
「あ、うん。大丈夫」
(なんだ、お酒を飲むんだ)
泊まろうとしているのかと勘違いしてしまった。自意識過剰な自分が恥ずかしい。
広いロビーの先にある高速エレベーターに乗り、一気に上層階に移動する。
下りて直ぐの所に店は有った。店内は暗い印象だったが、窓際の席からは煌めく夜景が一望出来た。
(夜景が映えるように暗くしてるんだ……すごくお洒落なお店)
遥人はこういうところに慣れているのだろうか。夜景を気にすることもなく、結衣を見つめている。