求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
熱々のコーヒーが、テーブルの上にあった結衣の左手に思い切り降り注ぐ。
「あつっ」
思わず悲鳴を上げてしまう程の衝撃だった。
「えっ! ああ! すみません!」
菅原が叫ぶ。ただパニックになっているのか、咄嗟に身体が動かないようでおろおろとしている。
結衣も彼に負けないくらいオロオロしていた。指先に心臓でもあるようにズキンズキンと疼く。
(すごく痛い。ええと、こいうときはどうすればいいんだっけ?)
慌てているのに、行動出来ない。
そのとき、肘のあたりを掴まれた。
「立って。直ぐに冷やすんだ」
「え……才賀君?」
遥人は結衣を引っ張りパントリーの奥に進んだ。水を流し結衣の左手を冷やす。
未だにじくじくと痛む指先に、ひんやりとした水がかかる。
(あ、冷たい……)
ようやく落ち着きが戻ってくる。
結衣の手を支えてくれている遥人が、心配そうに囁いた。
「大丈夫?」
「うん……驚いたけど、こうして冷やしていれば治ると思う」
やけどをしたら冷やすのは基本だ。そんなことに頭が回らないなんて余程焦っていたのだろう。
「もう大丈夫」
手を引こうとすると、遥人がそれを留める。
「まだ駄目、もっとしっかり冷やさないと」
「わ、分かった。ごめんね、迷惑かけて」
「迷惑な訳ないだろ?」
「でも……」
「腕疲れるよな。俺が支えておくから力抜いて」
遥人のおかげで、同じ体勢で立っていても負担がかからない。
すぐに冷やして貰ったからやけどの痛みも大分引いていた。
何より彼が居てくれるのが心強い。