求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「才賀君?」
急いだ方がいいのではと怪訝に思っていると、彼の視線が一点に向けられているのに気が付いた。
結衣もその方向に目を向け、「あ」と小さく呟いた。
予想外の光景。道の向こうから梓が近づいて来ていたのだ。
(な、なんで瀬口さんが?)
荷物などから外回りからの帰社途中だと分かるけれど、駅からの道中でもないここでなぜ居合わせるのだろう。
(彼女、どこに行ってたんだっけ……)
朝確認した部員のスケジュールを思い浮かべるけれど、はっきりしなかった。
そうこうしている内に梓は結衣たちの目の前に着き、不満そうに遥人を見つめた。
「才賀さん、どこに行くんですか?」
「お疲れさま。俺はもう帰るところ」
梓の不機嫌さには気付いているはずなのに、遥人はごく普通の対応をする。
「え……帰るって言われても。相談したいことが有ったんですけど」
責めるような口調だった。
「仕事の相談なら週明けに聞くから。間に合わないようなら白川課長に指示を貰って」
淡々とした遥人の言葉に、梓は大げさとも思える程の驚愕の表情を浮かべる。
「そんな! 急ぎなんです、困ります! もう帰るだけなんですよね?」
そう声を高くすると、梓はようやく結衣の方に目を向けた。