求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「もう一度言いますけど、早々に別れて下さい。あなたが冷静に身を引くのなら、私の方から迷惑をかけた謝罪はします」
謝罪と言うのは慰謝料だろうか。
(お金で解決なんて……)
虚しさがこみ上げる。体中から力が抜けていき、日奈子に反論する気力は残ってなかった。
ただこれだけは確かめたいと、口を開く。
「北桜さんは、才賀君の記憶がなくなった今も変わらずに好きなのですか? もし政略結婚でなかったとしても、彼と結婚したいと思ってますか?」
日奈子は何を思っているのか黙ったまま結衣を見据える。
「先ほども言いましたけど私は遥人さんに好意を持ってます。そうでなければ、記憶を失ったからと私を蔑ろにするような男性にいつまでも拘りません」
「そう……ですか」
「私は以前の関係に戻す為には何でもしますよ」
日奈子の声は冷ややかだった。
(まるで脅迫されているみたい)
たおやかで美しい令嬢の日奈子を、恐ろしいと感じる。
そしてこの短い時間で、結衣の気持ちが変化している。
遥人に思い出して欲しい。ずっとそう思っていたはずなのに、今は彼が記憶を取り戻すのが怖い。