求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
◇◇

遥人の話は事実だけを述べているためか、そう時間がかからずに済んだ。

けれど結衣にとっては思いもしない内容だった。

「ええと……それじゃあ才賀君と北桜さんとは、親同士が決めた婚約者だったけど一度別れた……その後再び付き合い始めたけど記憶がない間のことだから、どうしてまた付き合ったのかも、彼女への気持ちも何も分からないってこと?」

「ああ。彼女に何がきっかけでやり直したのかは聞いたんだ。でもはっきりしなかった」

「どうしてはっきり言ってくれないのかな……」

もし結衣が婚約者の立場だったら、遥人に思い出して欲しくて細かいところまで話していたのに。

「俺からやり直して欲しいと希望したそうだが、なぜそういった気持ちになったのかまるで分からない。正直言って彼女と価値観や性格が合うと感じたことがないんだ。その考えが変るには余程のきっかけが有ったはずだけど、これと言って何も無いそうだ」

「それって……」

本当にふたりは付き合っていたのだろうか。

遥人の話では一度目の婚約のときも、恋人のような間柄ではなかったと言うし……。

話を聞くにつれモヤモヤとした想いが大きくなる、どうにも納得がいかないのだ。
そんなときある考えが脳裏を過った。

ふたりが付き合っていた客観的な証拠は、聞いた限りでは何もなさそうだ。ただ日奈子の言葉だけ。

(もし……北桜さんが何か思い違いをしているのだとしたら?)

当時の遥人は真摯に仕事に打ち込んでいたし、結衣を好きだと言ってくれていた。

彼の人柄を思えば有り得ないことなのだ。
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