求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「あの……北桜さんと付き合っていたのを知っている人は、誰かいるの?」
(どうか誰もいないと言って)
自分本位かもしれないけどそう願わずにはいられない。けれど遥人の答えは落胆するものだった。
「家族以外にはいない。ただ前にも言ったと思うけど俺が事故に遭ったのは彼女に会いに行く途中で、そのときのやり取りのメッセージが残っているんだ」
その話は結衣も覚えている。忘れられる訳がない。
(私と旅行の約束をしていた日なのだから)
「才賀君はその日何の用で北桜さんと会うつもりだったの? メッセージが残っているなら分るんだよね?」
あの時は聞く勇気が出なかった。でももう知らないで済ませることは出来ない。
言い辛い内容なのか、遥人が心配そうな目で結衣を見つめながら言う。
「メッセージのやり取りに具体的なことは残ってなかった。彼女が言うには結婚について話をするために待ち合わせていたそうだ」
「け、結婚?」
結衣は大きく目を見開いた。
「具体的な話を進めるためだそうだ」
まさかそんなはずはない。事故に遭う前の遥人は結衣が待っていたのを知っていた。
楽しみにしていたのだって分かっていたはず。それなのに連絡すらせずに婚約者と結婚の打合せ?
(酷い……そんなのってない)
何かがこみ上げるように喉が熱くなる。これは悲しみなのか怒りなのか。
冷静に気持ちを見つめる余裕はない。ショックのあまり体が震えるのを止められない。
「結衣、大丈夫か?」
結衣の様子の変化を察した遥人が、ソファーから腰を上げかける。
だけど結衣はそれを制するように、険しい声を上げた。
「そんなの絶対に違う! 嘘に決まってる」