求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
それにしてもと、結衣はこっそり溜息を吐いた。

過去の彼女の存在にかなりダメージを受けている。

遥人のようなハイレベルの男性に恋人がいるのは当然と頭では理解しているけど、実際知るとやはり凹む。

(どんな人なんだろう、どうして別れたのかな?)

気になり出すと止まらない。それまで亜実の執拗な質問に若干引いていたというのに、今はもっと聞いてと応援している。

結衣の望みに応えるように亜実が言った。

「彼女どんな人? 社内?」

遥人は無言のままだ。どんな顔をしているのか気になるけど隣を向けない。動揺が態度に出てしまいそうだから。じっとしているので精一杯だ。

張り詰めた気持ちを紛らわすよう、届いたばかりの杏酒をかなりハイペースに飲みながらも彼の声を逃さないよう耳をそばだてる。

しかし遥人ではなく、高野が答えた。

「社外。俺が知らない顔だったから間違いない」

「え? 高野君、才賀君の彼女に会ったの?」

「まあな。すごい美人だった。それなのに遥人のやつ素っ気なくて手も繋いでやらなくてさ。まあ照れてたんだと思うけど、そんなだから振られたみたいでさ。結構悲惨だろ?」

「それ高野君には言われたくないと思うよ。ね、結衣もそう思うでしょ?」

亜実に突然話をふられてどきりとした。

「あ……うん。そうだね」

曖昧に笑って誤魔化したけれど、ここは振らないで欲しかった。

遥人の元彼女の話なんてしたくない。しかも遥人が照れて手も繋げないんて想像できない。結衣に触れたときはとても自然でかつ積極的だったのに。その違いは相手が”すごい美人”だからだろうかなどと卑屈な考えが頭に浮かぶ。
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