求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「俺の話は終わり! 高野の新居の話だったろ」
遥人が強引に話題を変えた。そちらの件も関心が高かったようで、二次会を高野の家でやろうかと盛り上がり始める。
結衣も会話に参加して、ときには声を上げて笑った。けれど遥人の元彼女の件は棘の様に心に刺さったままだった。
時間制限がなかったため長居をしてしまい、居酒屋を出た頃には二十二時を回っていた。
亜実と高野を含めた半数以上は別の店で飲み直すという。
結衣はそこまでの元気が出ず、翌日が平日というのもあり帰宅組に入った。
居酒屋の前で別れ、駅まで向かう。同じく帰宅する同期とは路線が違うのでひとりきりだ。
夜の町の喧噪の中、足早に進んでいると「結衣、待って」と声をかけられた。
(この声、才賀君?)
高野達と二次会に行ったはずなのに。驚き振り返ると走って来たのか少し息を乱した彼がいた。
「どうしたの? みんなは?」
「うまく抜け出して来た」
「抜け出したって……いいの?」
遥人は同期でも中心人物で彼がいた方が盛り上がる。だから大抵強引といっていいほどの勢いで誘われるのだ。今日も高野にぐいぐい腕を引っ張られていた。
「高野なら平気。今は結衣と話したかったから」
「私と?」
遥人は頷きながら結衣に歩くよう促す。飲み屋通りを外れいつものオフィスビルが立ち並ぶ通りに向かった。
駅までは遠回りになるけれど、しずかで落ち着いた雰囲気だ。