【女の事件】とし子の悲劇・2~ソドムの花嫁
第9話
その頃であった。

オレンジタウンのダンナの家の前で、黒のYシャツに白のスーツのやくざ4人が玄関の前で大声でおらんで(さけんで)いた。

キンリンの住民は、ヒソヒソ声で話していた。

現場を目撃した武方さんは、急いでアタシがバイトをしている県庁前のファミマへ行った。

けいさくはとうとう、職場実習をさぼるようになった。

知らないうちになまけぐせがついたので、どうしようもないバカになった。

加えて、まんのう町で発生したカップル襲撃事件でけいさくは香川県警からうたがいをかけられた。

アタシは、ダンナの家はもうかばいきれないと怒っていた。

武方さんは、オタオタした声でダンナを助けてほしいと言うたが、アタシはイヤと拒否した。

アタシは、新しく来たお弁当を陳列ケースに入れながら武方さんに言うた。

「武方さん!!アタシはダンナの家とは離縁したのよ!!それなのに、何でアタシにダンナの家のことを聞いてくるのよ!!アタシはダンナの家のことを聞いただけでもヘドが出るのよ!!お願いだから帰ってよ!!帰らなければ店長呼ぶわよ!!」
「とし子さん…こっちは困っているのだよぉ…家にやくざが4人押し掛けて、大声でおらんでいるのだよぉ…しゅうさくさんがどこで何をしているのか分からない…その上に、けいさくさんの就職が決まらないこともあるから困っているのだよぉ…」

アタシは、武方さんに怒った口調で言うた。

「アタシは、あんたとダンナの家と実家の家族に対して強い怒りを抱いているのよ!!武方さんは、アタシがなんで怒っているのかわかっとんか!!」
「とし子さん…」
「あんたね!!7年前のことを忘れたとは言わさないわよ!!」
「7年前のことって?」
「すっとぼけたことを言わないで!!7年前にダンナがオレンジタウンに家を建てるときに、どうして汚い手を使ったのよ!?」
「えっ?汚い手?」
「自分の胸に手を当てて、よーく考えてよ!!」
「とし子さん、私にどんな落ち度があるのかなぁ?」
「落ち度があるから怒っているのよ!!オレンジタウンにダンナの家を建てる時に、なんで汚い手を使ったのかと聞いているのよ!!」
「とし子さん、とし子さんってば…」
「いいわけばかり言わないで答えなさいよ!!」

アタシは、ひと間隔あけてから武方さんにこう言うた。

「あんたのことについては、ダンナの家の近所の奥さまが、アタシに全部話したのよ!!」
「とし子さん…」
「ダンナがオレンジタウンに家を建てるときに、アタシの両親と不動産屋さんとダンナと武方さんと一緒に、建築する土地に来ていたことを近所の奥さまから聞いたのよ!!あんたはその時に何をしていたのよ!?」
「えっ?」
「アタシの両親がダンナの家の建築費を出したことを怒っているのよ!!あんたはその時に間に立っていたよね!!答えなさい!!」
「その時、建築する土地には行ったよ…だけど、とし子さんは何で目くじらを立てているのかな?」
「やかましいわねあんたは!!アタシの両親がダンナの家の建築費を出したことがいかんから怒っているのよ!!あんたも両親とダンナとグルになってアタシを押さえつけたから殺すわよ!!」
「とし子さん…とし子さんってば…」
「アタシの両親がアタシのお見合いがまとまる見込みがなくなったら、アタシとダンナを思いついたのよ!!あんたは両親とダンナの手先だからぶっ殺してやる!!」
「ちょっと待ってくれよぉ…頭がこんがらかっていてよくわからないよ…」
「話をすり替えないでよ!!あんたね、正直に答えないと本当に殺すわよ!!」

アタシがものすごく怒っていたので、困り果てた武方さんは、アタシに返答した。

「とし子さん、とし子さんの両親はとし子さんのお見合いのことは出した…けれど、直ちに結婚すると言うことではなかったのだよ…」
「(怒りを込めて言う)ウソばっかり!!」
「とし子さん。」
「それじゃあ、覚え書きを書いた書面を出しなさいよ!!」
「覚え書きは持っているよぉ…」
「それじゃあ、アタシに覚え書きの内容を教えてよ!!」
「分かった…教えるよ…だけどその前に、ひとつだけお願いを聞いてくれるかなァ…」
「イヤ!!今すぐに話なさいよ!!」
「分かってるよぅ~だけど、ひとつだけお願いを聞いてくれたら覚え書きの内容を話すよぅ~」
「あんたの願いは、ダンナともう一度話し合えと言うのでしょ…イヤ!!断固拒否するわよ!!」
「どうして拒否するのかなぁ…しゅうさくさん…とし子さんに帰ってきてほしいと泣いているのだよ…」
「帰ってよ!!」
「えっ?」
「帰ってよといよんのが聞こえないのかしら!!」
「とし子さん!!とし子さんはしゅうさくさんの泣き声が聞こえないのかな!!」
「ええその通りよ!!甘ったれのDVダンナの泣き声はいいわけばかりだから、信用できないわよ!!メソメソメソメソ三角お顔になるまで泣いて泣きまくる男なんか女々しいわよ!!」
「とし子さん!!」
「あんたはアタシの両親とダンナとグルになって、アタシを押さえつけたのだからぶっ殺してやる!!」
「とし子さん!!そんなことよりも、しゅうさくさんと話し合えと言っているのだ!!とし子さんの両親は、とし子さんの花嫁姿を見ることだけが楽しみで生きてきたのだぞ!!」

武方さんの言葉にブチ切れたアタシは、ポケットからスマホを取り出して、電話をかけようとしていた。

「どこへ電話するのだ!?」
「アタシの知り合いの家よ!!」
「知り合いだと!!」
「あんたが覚え書きの内容をアタシに言わないのであれば、サイアクのシナリオを使うわよ!!」
「サイアクのシナリオだと!!」
「近いうちにダンナとダンナの実家の両親とアタシの両親を相手取って、オレンジタウンの住民全員が家の撤去と慰謝料請求の民事訴訟が起こるわよ!!今月中かおそくとも来月中に裁判が始まるのよ!!本当のことよ!!今回の裁判は、あんたも被告人になる可能性が高いのよ!!」
「とし子さん!!」
「帰ってよ!!人の職場に土足で上がり込んで、バイトの手を止めたから許さないわよ!!帰んなさいよ!!」
「とし子さん!!そんなことよりもダンナともう一度話し合え!!」

武方さんの言葉にブチ切れたアタシは、リダイヤルボタンを押した。

(プルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル…ガチャッ)

「もしもし組長!!とし子よ!!仏生山の武方のクソガキがアタシにつきまといをしていたわよ!!本人がここにいるわよ!!武方のクソガキをチャカで撃ち殺してよ!!」

武方さんは『助けてくれぇ~』とさけびながら逃げていった。

フン、弱虫…

アタシは、冷めた目つきで逃げていった武方さんを見つめていた。

ところ変わって、店の奥の部屋にて…

アタシは、ロッカーの戸を開けて鏡を見つめていた。

鏡には、真っ赤な目でほがそ(グチャグチャ)の髪の毛のアタシの表情が写っていた。

アタシは、制服のジャケットと青色のブラウスを脱いで、ロッカーの戸に思い切り叩きつけた。

ブラウスの下は、ターコイズのブラジャーを着けていた。

アタシは、右手で思い切り髪の毛をかきむしった後、ターコイズのブラジャーを思い切りちぎった。

その場にすわりこんだアタシは、声をあげて泣いた。
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