魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜
過去を懐かしむような遠い目をした彼は、優しい声で続けた。
「そんなある日、レベッカという名の女の子が店に来てね。料理が気に入ったらしく、毎日通ってくれるようになったんだ。とても優しくて純粋で、綺麗な子だった。いつもカウンターの席に座って、俺が料理を作るのを楽しそうに眺めていたよ」
「もしかして、恋人だった…とかですか?」
「いや、そういう関係じゃない。彼女の気持ちはわからないし、お互い何も言うことはなかったよ」
彼は、ひどく心を揺さぶられているようにそう呟いた。
ふたりの間に、はっきりと愛の告白がなかったのなら何も言えない。だが、レベッカさんは惹かれていたんじゃないだろうか?
料理が好きなだけで、毎日バーに通ってカウンターに座るわけがない。彼を好きになって、近づきたいから会いに行ったんだ。
私も世の女性のひとりとして、女心くらいはわかる。
「それで、彼女が店に通い始めて二ヶ月くらい経った頃だったかな。常連客の噂で、レベッカがストーカーに悩まされているって話を聞いたんだ」
「ストーカー?」
「そう。見知らぬ男につけられていたらしい。本人は俺に何も言ってこなかったけど、顔見知りのシェフってだけの関係だし、気を遣われていたのかもしれないね」