魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜
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夕闇に染まる魔界の町。
レストランに帰る間、別れ際のヴァルトさんの顔が頭から離れなかった。重い足取りで広場まで来たものの、なんとなく気分が落ち込んでベンチに腰掛ける。
あんなに頑なに断っていたのは、レベッカさんのことを引きずっていたからだったのか。
もう、本当にシェフには戻らないつもりなのかな。
私に何かできることがあればいいのに。
「ミレーナ」
ふと、頭上から声がした。
顔を上げると、綺麗な藍色の瞳と視線が重なる。
「ルキ…!どうして。城でのお仕事は終わったんですか?」
「あぁ。ちょうどお前を迎えに行こうとしていた」
そう答えると、ルキは流れるように隣へ座った。そのまま、黙って私を見つめている。
なんだか、顔をあわせるのは久しぶりだ。
日中はヴァルトさんの家に通っていたし、夜になって帰るとルキは本格的に活動しはじめた頃で、入れ違いになることが多かった。
この夕暮れがお互いの時間が重なるほんのひと時なのである。
その時、ふいに長い指が頬に触れた。
人差し指の背で優しく目元を撫でられ、不意打ちの仕草に胸が鳴る。
「な、なんですか?何かついていました?」
「目の下にクマができている」
「クマ?」
「昨日、何時に寝た?眠れてないのか?」
思い当たる節に、はっ!とした。
「そういえば、最近は横になっても眠れなくて…レストランの今後を色々考えてしまうんです」