魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜
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「おや、久しぶりだね。随分顔を見せないものだから、もう諦めたのかと思っていたよ」
二週間の時が経った、満月の夜。
ルキと共に屋敷の扉を叩くと、ヴァルトさんは、やれやれと言わんばかりの露骨な表情で出迎えた。
彼が好む夜の時間帯に訪れたのは、ちゃんとした目的がある。
「ヴァルトさんに会いに来るのは、これで最後です」
「お、ついに他のシェフを見つけたの?まさか、わざわざ別れの挨拶をしに来てくれたのかい?」
「いえ。今日は、ヴァルトさんをレストランに招待するために迎えに来たんです」
彼は予想外の答えに呆気にとられたようだ。
状況が掴めていない彼に、すっと手を差し伸べる。
「今夜は、ぜひ《レクエルド》に来ていただきたいんです。ヴァルトさんの気持ちが変わらないなら、これからは二度と押しかけたりしません」
黙り込む様子を見つめて返答を待っていると、やがて、表情を緩めた彼は降参したように穏やかに答えた。
「わかったよ。そこまで言うなら、最後くらいは付き合おう」
思わず、ルキと顔を見合わせる。
嬉しさが込み上げるが、喜ぶのはまだ早い。彼はシェフになることを承諾したわけではないのだ。
一歩前進したことに浮かれながら、私はヴァルトさんを連れてレストランへと向かった。