魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜
「いらっしゃーい!お兄さんが噂のシェフ?カッコいいー!これからよろしくね!」
満面の笑みで出迎えたケットに「断れなくするつもりかな?」と苦笑するヴァルトさん。
じゃれつく黒猫をしばらく構った後、薔薇色の瞳が店内を見渡した。迷わずキッチンへと向かった彼は、調理器具を手にしながら呟く。
「写真でも素敵だと思ったけど、やっぱりここはいいレストランだ。包丁も鍋も、よく使い込まれている。前の主人は、よっぽど大事に使っていたんだね」
その言葉に、ルキは小さく息をした。
ライアスさんが残した店は、大切な思い出で溢れている。
《レクエルド》に込められた意味は、“思い出”。
料理を通して様々な人との出会いがあり、それぞれの思い出が詰まっている。この店を訪れたことで人生が変わったというお客さんもいるかもしれない。
そして、ルキも私もそのうちのひとりだ。
その時、過去に思いを馳せるようにカウンターを撫でたヴァルトさんは、静かに口を開く。
「さて。そろそろ、ここに連れてきた目的を教えて欲しいな。レストランは気に入ったけど、見学だけでは俺の思いは変わらないよ。もしかして、三人がかりで夜通し説得をするつもりかな?」
私は、ゆっくりとカウンターに歩み寄った。
そして、ヴァルトさんをまっすぐ見上げて問いに答える。
「いいえ。今日はヴァルトさんに会って欲しい人がいて、ここに来てもらったんです」
「会って欲しい人?」
その言葉を合図に、ケットがレストランの扉を開けた。
記憶から忘れ去られた町を背景に、ひとりの女性が立っている。ゲストの姿を見た途端、ヴァルトさんの目が見開かれた。
「レベッカ…?」