結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~



「行永、どうなってる」

今日も榛名先輩が怖い顔で近づいてくる。私は顔を引きつらせながら、気をつけをした。

「オンスケで進んでるんじゃなかったのか?」
「あの、クライアントの希望で……。私としましては一日は猶予があるかと判断しました……」

榛名先輩は今日も怖い。私に任せてくれる案件じゃなかったの?なんでそんなに怒ってるの~?

「勝手に判断するな。おまえとクライアントだけで決めていい問題じゃない。この件は、外部プランナーに発注するんだぞ。オンスケでギリだ」

淡々と冷たい口調で言われ、私は頭を下げた。

「すみません!すぐに連絡します!」
「当たり前だ。今おまえに任せている仕事の中では、プライオリティが高い。甘く見るな」

私はしおしおと背を丸め、クライアントに電話をかける。
仕事は嫌いじゃない。だけど、こんなときはちょっと泣きたくもなる。今回は自分ひとりで仕切っていいものだと思って叱られてるものなあ。榛名先輩にビビらずに確認すべきだった。

失敗がうずたかく重なって、私の自己肯定感を奪っていく。努力は目に見えた成果になってこない。ようやく上手くいっても榛名先輩は当然という表情。

はあ。どうしたらいいんだろう。
頑張りは継続する。だけど、せめて、本当にせめてよ?榛名先輩が今の冷たくておっかない態度をちょこっとでも変えてくれたら、私的にはすごくラクになるんだけどなあ。少なくとも日々のプレッシャーは消える。絶対気がラクになる。

「行永、どうなった?報告は」

五分もしないうちに戻ってきた榛名先輩に私は直立不動で報告する。

「はい!クライアントは元のスケジュールで了承してくれました!プランナーさんにはご不安を与えてしまったかと思うでの、今一本メールしておきました!」
「よし」

まるで飼い犬のしつけのごとく短く言い、榛名先輩は私のデスクにことんと小箱を置いた。

「引き続き管理しろ」
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