青春ヒロイズム




えーっと、イチゴミルク。イチゴミルク……

紙パックジュースの自動販売機で、普段は買わないそれを探し出して購入ボタンを押す。

続けて、甘さ控えめのカフェオレを買うと取り出し口から紙パックをふたつ引っ張り出した。

早く戻ろうと勢いよく振り向いたとき、近くにいた他の生徒に肩がぶつかる。


「うわっ」

同時に、嫌な感じの男子生徒の低い声がした。


「最悪。コーラ被った」

「俺の上履きにもかかったんだけど」

不快そうに眉を顰めた男子二人が、同時に私に視線を向けた。

私がぶつかったほうの人が、持っていた紙コップを反対の手に持ち替えて、手の甲を濡らしたコーラの水滴を振り落とす。

どうやら彼らは、私の隣の自動販売機で紙コップの飲み物を買っていたらしい。

そんなに激しくぶつかったつもりはないけれど、私がぶつかった人の制服のシャツには大きめのコーラのシミができていた。

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