青春ヒロイズム


「あの……すみません」

謝りながら、スカートのポケットに入れていたポケットティッシュをおずおずと差し出す。

小さく会釈して去ろうとしたら、ぶつかったほうの人がポケットティッシュを振り払って私の手首をつかまえた。


「いや、もっとちゃんと謝れよ。俺ら、制服も足もベタベタなんだけど」

ぶつかったほうの人が、私を見下ろして凄む。

私を睨む目も低い声も怖かった。


「だからティッシュを……」

地面に落ちたティッシュを横目に震える声でそう言ったら、彼が私をバカにするように笑った。


「いや。汚れたシャツと上履き、あとジュース代くらい弁償しろよな」

「そんなこと言われても……」

「財布持ってんだろ?」

「持ってますけど、今日はそんなにお金持ってないし。かわりに、これじゃダメですか?」

迷った末に、今買ったばかりのイチゴミルクとカフェオレを震える手で差し出す。

村田さんのだけはあとで買いなおすしかない。

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