青春ヒロイズム
ほっとして振り向くと、そこに星野くんが立っていた。
「お前には関係ないだろ」
私がぶつかったほうの人が、星野くんのことを無視して私の財布を開ける。
それから中身を覗いて小さく舌打ちした。
「何だよ、全然持ってねーじゃん」
だから、さっきそう言ったはずだけどな。
心の中でつぶやく私の前で、そいつが財布からなけなしの財産を抜いていこうとする。
そのとき、足早に歩み寄ってきた星野くんが目の前の男子から私の財布を奪い取った。
「だから、女の子にたかるなって言ってんだろ」
星野くんの声が低く響く。
どちらかと言うと温厚なイメージがある星野くんの、怒気を含んだ声に驚いた。
目の前にいるどうやら先輩らしきふたりの男子も、星野くんの声に一瞬怯む。
だけどすぐに威勢を取り戻して、星野くんに突っかかってきた。
「何だよ、お前。じゃぁ、お前が代わりにシャツ代払ってくれんの?」