本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「……これなら、仕事にも差し支えないだろう。幾分、幼稚さが抜けたな」

「何なのよ、その言い方は!もっと、こう、綺麗になったね、とかない訳?…まぁ、そんな事を言う一颯なんて気持ち悪いけどね!」

二人の掛け合いが何とも言えず、間に挟まれている私はたじろぐ。

「篠宮さんは、こんな彼氏を持つと大変ね!我が弟ながら面倒な奴だわ!」

彼氏?

我が弟?

「どっちにも言ってなかったが、コレは姉で美容室の店長。篠宮は部下で、幼稚さを理由にいじめられてるから連れてきただけ、以上!」

簡単に説明がまとめられ、一気に話が終結してしまった。唖然とする私を他所に店長さんは悔しそうに嘆いた。

「一颯が初めて女の子の名前で予約して連れて来たから、てっきり彼女だと思ったのよ。篠宮さんは素直で可愛いし、一颯が好きなタイプかなって思ったのに残念!」

私の事はさておき、支配人の好きなタイプは素直で可愛い子なんだ。ツンケンしている割には可愛い子が好きだなんて、意外だな。

キャリアで仕事も出来て綺麗な女性が支配人にとっては相応しい気もするが、実際の気持ちは想像とは違うものなんだな、と思う。

「……依子には似てる気がする」

「依子?…た、確かに依子系かも!」

よりこ、頼子、依子!?

"よりこ"とは誰ですか?

私に似てるんですか?

先日の寝言から気になってはいたが、確認も出来る訳もなく現在に至るが、ついに明かされる時が来た気がする。

チャンスは今しかない、勇気を出して聞いてみようと思う。

「あ、あのぉ…よ、よりこって…?」
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