本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
日に日に好きになって、一颯さんの恋の罠から抜け出せなくなった。曖昧な関係にも終わりが来て、お互いの気持ちが通じ合い、晴れて恋人になったのだ。

リゾートホテルから移動して来た時には想像も出来なかった輝かしい世界が、私の目の前に広がっている。

「……じろじろ見るな。視線を感じて余所見してしまうから」

信号待ちの時、頭をコツンとグーで軽く叩かれて一颯さんに怒られた。

自分だって、時々、私の事をチラチラ見てるくせに私は駄目だなんて理不尽過ぎる。怒られても、運転する一颯さんが格好良すぎて見てて飽きないんだもの。

「一颯さんが運転してるのを見てるのが好きなんです」

「……何で?」

「何で?って…、格好良いから」

「……そんな事言われたのは初めてだな」

一颯さんは少し間を置いて笑いながら、私の頭をクシャクシャと左手で撫でる。信号が青に変わり、再び車は走り出した。

周りの景色が過ぎて行く中、話を交わさない時の車内は静まりかえっている。一颯さんの車内は良い香りが漂っているけれど、外気音以外は無音かラジオなのだ。

前回も前々回も車内は無音かラジオだった。もしかしたら一颯さんは静かなままで車を運転するのが好きなのかな?
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