慈愛のケモノ
それを制されて、真希が神妙な面持ちで言う。
「違うの。どの俳優に似てるとか髪の長さとか癖とか口調とかそういうの」
「どうしたの、急に」
錬成でもしてくれるのか、と期待してしまう。
真希は黙って私の言葉を待っている。それに張り合うつもりは毛頭無く、好きな俳優を思い浮かべる。
「富山悠介とか、格好良いと思ってるかな……」
最近観た映画に出ていた俳優の名前をあげる。
「格好良いけど、格好良いことしか分からない……! 俺様? 優しい系? え、なに?」
「どちらかと言えば優しい感じだったような……」