慈愛のケモノ
しかも今、水本さん”たち”って言った?
「真希は水本さんと付き合えたの?」
「ううん、まだ」
「まだって……」
「遠月さんも楽しみにしてるって」
その名前が出て、思考停止。会いたくない。
楽しみにしてるって、それは真希に会えるのが楽しみなだけだ。
私が行ったところで、何がどうも変わらない。
「……帰っても良い?」
なに言ってんだ、という顔をされた。
この前とは違う飲み屋に入ると、水本さんと遠月さんがいた。
「お待たせしました」
「俺らもさっき来たとこ」
前を歩く真希が先に座るのは当然のことで、私がその隣に座る。